投稿日:2026年11月5日
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは?ふわふわ感が続く原因と治療・鍼灸でのアプローチ
カテゴリ: めまい

PPPDとは?ふわふわ・ゆらゆらするめまいが続く状態
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは、回転するようなめまいではなく、ふわふわ・ゆらゆらとした浮遊感や不安定感が、ほぼ毎日、3か月以上続く状態を指します。立っているときや動いているとき、スーパーや人混み、パソコンやスマートフォンの画面を見ているときなどに悪化しやすいのが特徴です。
多くは、耳の病気や片頭痛、パニック発作などによるめまいがきっかけとなり、その原因が落ち着いたあとも、脳がバランスに対して過敏な状態を続けてしまうことで起こると考えられています。
ただし、PPPDの診断は、他のめまいの病気を除いたうえで、専門の医療機関で行われるものです。自己判断でPPPDと決めつけず、まずは耳鼻咽喉科や脳神経内科、めまい外来などで相談することが大切です。
この記事では、PPPDの症状と特徴、起こる仕組み、注意したい症状、病院での治療、日常生活でできるセルフケア、そして鍼灸の位置づけについて解説します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
PPPDの主な症状と特徴
PPPDのめまいには、いくつか共通した特徴があります。ご自身の症状と照らし合わせるための目安として、ご覧ください。
ふわふわ・ゆらゆらする(回転しない)
天井がぐるぐる回るようなめまいではなく、足元がふわふわする、身体が揺れている感じがする、地面が不安定に感じるといった、浮遊感や不安定感が中心です。「船に乗っているような感じ」と表現される方もいます。
症状の強さには日によって波がありますが、「ほぼ毎日」何らかの違和感が続いているのが、診断のひとつの目安とされています。
立っているとき・動いているときに悪化する
横になっているときや座って安静にしているときは軽く、立ち上がる、歩く、人や乗り物の動きを目にする、といった場面で症状が強くなる傾向があります。これは、身体の位置や動きに対して、脳が過敏に反応しているためと考えられています。
スーパー・人混み・画面で悪化する
棚がずらりと並ぶスーパーの店内、人が行き交う駅や商業施設、動きの多い映像、パソコンやスマートフォンの画面などを見ていると、ふらつきや気持ち悪さが強まることがあります。目から入る情報が多い場所で、症状が出やすい点もPPPDの特徴です。
そのため、外出や買い物、仕事での画面作業がつらくなり、日常生活に影響が出てしまう方も少なくありません。
不安や疲労で変動する
疲れがたまっているとき、睡眠不足のとき、不安や緊張が強いときに、症状が悪化しやすいと言われています。反対に、気持ちが落ち着いているときや、何かに集中しているときには、症状が軽く感じられることもあります。
この変動のため、周囲から「気のせい」「疲れているだけ」と受け取られてしまい、つらさを理解してもらえないと感じる方もいらっしゃいます。
「また起こるかもしれない」という予期不安
PPPDでは、めまいそのものに加えて、「また症状が強くなるのではないか」「外出先で倒れてしまうのではないか」という不安が、日常生活の負担になることがあります。電車やバス、人混み、買い物などを避けるようになり、行動範囲が少しずつ狭まってしまう方もいらっしゃいます。
こうした不安は、決して弱さや甘えではありません。めまいのつらさを経験した身体と脳が、自分を守ろうとして警戒を強めている状態と考えられます。
PPPDが起こるきっかけと仕組み
PPPDは、ある日突然、何の原因もなく始まるというよりも、何らかのきっかけとなる出来事のあとに続くことが多いとされています。
きっかけとなりやすい病気や出来事
きっかけとして知られているのは、次のようなものです。
・良性発作性頭位めまい症(耳石が関係するめまい)
・前庭神経炎(内耳につながる神経の炎症)
・前庭性片頭痛(片頭痛に伴うめまい)
・パニック発作や強い不安
・頭部の外傷
・その他、一時的にめまいやふらつきを起こした出来事
これらのめまいが一度おさまったあとも、ふわふわ感だけが残ってしまう、あるいは時間をおいて再び現れるといった経過をたどることがあります。
感覚の情報がうまくまとまらない

私たちの脳は、耳(平衡感覚)、目(視覚)、足の裏や筋肉(体性感覚)という3つの情報をまとめて、身体のバランスを保っています。通常は意識することなく、この3つの情報が自然に統合されています。
ところが、強いめまいを経験したあとなどに、このまとめ方がうまくいかなくなると、実際には動いていないのに揺れているように感じたり、足元が不安定に感じたりすることがあります。耳や脳の検査で明らかな異常が見つからないのに症状が続く背景には、こうした「情報そのものの問題」ではなく、「情報の処理の仕方」の変化が関わっていると考えられています。
脳の警戒と不安の悪循環
強いめまいやパニック発作などを経験すると、脳が「また起こるかもしれない」と警戒し、バランスに関わる情報に対して過敏になることがあります。その結果、本来は問題のない刺激(人混みや画面の動きなど)にも過剰に反応し、ふわふわ感や不安定感が強まります。
症状が強まると、さらに不安や警戒が高まり、感覚が過敏になる、という悪循環が続いてしまうことがあります。これは「気のせい」や「性格の問題」ではなく、脳と身体の反応の積み重ねによって起こるものと考えられています。
なお、こうした仕組みは現在も研究が進められている分野であり、すべてが解明されているわけではありません。
めまいで注意したい症状
ふわふわするめまいが続くと、「PPPDではないか」と気になる方も多いと思います。しかし、めまいは耳の病気や脳の病気、心臓や血圧の問題など、さまざまな原因で起こります。「慢性のめまい=PPPD」「めまい=自律神経」と決めつけず、次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・これまでにない激しい頭痛を伴う
・ろれつが回らない、言葉が出てこない
・手足のしびれや、力の入りにくさがある
・顔の片側がゆがむ
・物が二重に見える、まっすぐ歩けない
・突然、片耳が聞こえにくくなった
・耳鳴りや耳の詰まった感じを強く伴う
・胸の痛みや、強い動悸、息苦しさがある
・失神した、または意識が遠のく
・吐き気や嘔吐が強い、または繰り返す
激しい頭痛、ろれつが回らない、手足のしびれ、顔のゆがみなどがある場合は、脳梗塞や脳出血など、緊急性の高い病気の可能性があります。様子を見ずに、すぐに救急要請(119番)をしてください。
聞こえにくさや耳鳴りを伴う場合は耳鼻咽喉科、頭痛やしびれがある場合は脳神経内科など、症状に合った診療科で確認することが大切です。
PPPDの診断と病院での治療
ふわふわするめまいが長く続いている場合は、まず専門の医療機関で原因を確認することが基本です。ここでは、一般的な診断と治療の流れを紹介します。
診断は専門医が他の病気を除いて行う
PPPDの診断では、めまいやふらつきが、ほぼ毎日、3か月以上続いていること、立位や動作、視覚刺激で悪化すること、そして、他のめまいの病気では症状を説明できないことなどが確認されます。
そのため、聴力検査や平衡機能の検査、場合によっては頭部のMRIなどを行い、耳や脳の病気がないかを調べたうえで診断されます。診断には専門的な判断が必要なため、耳鼻咽喉科や脳神経内科、めまいを専門とする外来で相談するのがおすすめです。
薬物療法
現在の診療では、SSRIやSNRIといった、脳の神経伝達物質に働きかけるお薬が用いられることがあります。これらは本来、うつや不安の治療に使われるお薬ですが、PPPDに対しても、脳の過敏な状態を落ち着かせる目的で処方されることがあります。
お薬の種類や量、服用する期間は、症状や体質によって異なります。副作用が出ることもあるため、自己判断で始めたり、やめたりせず、必ず主治医の指示に従ってください。
前庭リハビリテーション
前庭リハビリテーションは、頭を動かす、視線を動かす、バランスをとるといった運動を、少しずつ段階的に行うことで、脳が刺激に慣れていくことを目指すものです。理学療法士の指導のもとで行う場合や、自宅で行う運動を指導される場合があります。
症状が出るのが怖くて動きを避けていると、かえって脳が過敏なままになりやすいと考えられています。無理のない範囲で、少しずつ慣らしていくことが大切です。
認知行動療法
めまいに対する不安や、「また起こるのではないか」という警戒心が強い場合は、認知行動療法などの心理的なアプローチが検討されることがあります。症状への捉え方や、行動のパターンを整理することで、不安と症状の悪循環を和らげていく方法です。
研究から見た治療の現状
PPPDの治療については、近年さまざまな研究が行われています。薬物療法と前庭リハビリテーションなどを組み合わせた治療が、単独の治療よりも症状の改善が大きかったという報告があります。
一方で、研究の質にはばらつきがあり、認知行動療法や脳への電気刺激などについては、効果がまだはっきりしていません。また、コクランレビュー(2022年11月時点)では、条件を満たす質の高い試験が少ないことから、各治療の有効性や安全性について、まだ結論を出せる段階ではないと報告されています。
つまり、PPPDの治療は研究が発展途上の分野であり、医師と相談しながら、ご自身に合った方法を見つけていくことが大切です。
日常生活でできるセルフケア
病院での診断や治療とあわせて、日常生活の中で取り入れやすい工夫をご紹介します。症状が強い場合は、無理をせず、主治医に相談しながら進めてください。
動くことを避けすぎない
ふらつきが怖くて、外出や運動を避ける日が続くと、脳が刺激に慣れる機会が減り、かえって症状が長引きやすいと考えられています。転倒しない安全な環境で、近所を短い時間歩く、家の中で軽く身体を動かすなど、できる範囲で少しずつ活動を続けてみましょう。
症状が強い日は無理をせず、調子の良い日に、少しだけ量を増やすくらいの気持ちで構いません。
睡眠・休息で自律神経を整える
疲労や睡眠不足は、症状を強める要因になりやすいとされています。毎日できるだけ同じ時間に寝起きする、就寝前のスマートフォンの使用を控える、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるなど、睡眠の質を整える習慣を意識してみてください。
カフェインやアルコールの摂りすぎも、眠りを浅くしたり、不安を強めたりすることがあるため、量や時間帯を見直してみるのもおすすめです。
首肩の緊張をゆるめ、呼吸を整える
めまいが続くと、無意識のうちに首や肩に力が入り、身体全体がこわばりやすくなります。入浴や蒸しタオルで首肩を温める、肩を大きく上げてストンと落とす、ゆっくり息を吐くといった、無理のないケアを取り入れてみましょう。
首を大きく回したり、強く伸ばしたりすると、かえって症状が強くなることがあるため、心地よい範囲にとどめてください。
症状を記録する
いつ、どんな場面で、どのくらい症状が出たかを、簡単にメモしておくと、診察の際に医師へ伝えやすくなります。症状が強まる場面や、軽くなる場面を知ることは、ご自身の症状への理解を深め、不安を和らげることにもつながります。
PPPDと鍼灸の向き合い方
鍼灸は、PPPDそのものを診断・治療するものではありません。診断と薬の調整、前庭リハビリテーションなどは、医療機関で行われるものであり、通院中の方は、まずその治療を継続していただくことが基本です。
鍼灸でお手伝いできること
めまいが続いている方の多くは、首や肩のこわばり、睡眠の浅さ、疲れの抜けにくさ、胃腸の不調、呼吸の浅さなどを併せ持っています。鍼灸では、こうした身体面の不調を確認しながら、緊張している筋肉をゆるめ、血流を促し、身体が休まりやすい状態づくりをサポートします。
また、自律神経のバランスが乱れやすい方に対しても、全身の状態をみながら施術を行います。皮膚や筋肉への穏やかな刺激は、自律神経の働きに影響すると考えられており、緊張が続いていた身体が休まりやすくなる方もいらっしゃいます。ふわふわ感そのものを直接なくすというより、症状に影響を与えやすい睡眠や疲労、こわばりといった土台を整えていくお手伝いです。
施術を受ける時間は、1週間のうちのほんの一部です。普段の睡眠、姿勢、呼吸、動き方、不安との付き合い方といった、施術以外の時間の過ごし方も、症状と深く関わっています。そのため、問診では、症状が出る場面や生活の様子、不安に感じていることを丁寧にお伺いし、日常で取り入れやすいセルフケアもあわせてお伝えしています。
エビデンスについて知っておいていただきたいこと
PPPDに対する鍼灸の効果については、薬物療法や前庭リハビリテーションの補助として組み合わせた研究が一部にある程度で、鍼灸単独の有効性を示す質の高い研究は、現時点では十分ではありません。そのため、当院では「鍼灸でPPPDが治る」とはお伝えしておりません。
あくまで、病院での治療を優先していただいたうえで、身体のこわばりや睡眠、疲労といった面を整える選択肢のひとつとして、ご検討いただければと思います。お薬を服用中の方も、現在の通院状況や服薬内容をお伺いしたうえで、身体の状態に合わせて施術を行います。
めまいや自律神経の乱れについて、当院の考え方や症例は、めまいや自律神経のページでもご紹介しています。あわせてご覧ください。
PPPDについてよくある質問
Q1.PPPDは治りますか?
治療や生活の工夫によって、症状が和らいでいく方もいらっしゃいますが、経過や時間には個人差があります。焦らず、主治医と相談しながら、続けられる方法を探していくことが大切です。
Q2.ふらつくのが怖くて外出できません。動いても大丈夫ですか?
安全な環境で、少しずつ活動を続けることが助けになる場合があります。ただし、症状の強さや原因によって適切な対応は異なるため、自己判断で無理をせず、必ず主治医に確認してください。
Q3.病院で「異常なし」と言われましたが、ふわふわ感が続いています。
耳や脳に明らかな異常がなくても、めまいの症状が続くことはあります。PPPDなどの可能性も含めて、めまいを専門とする外来で相談してみることをおすすめします。
Q4.薬を飲んでいても鍼灸を受けられますか?
服薬中の方も、施術を受けていただくことは可能です。ただし、お薬の変更や減量は、自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。
Q5.鍼灸は何回くらい通う必要がありますか?
必要な回数や期間には個人差があります。初回に身体の状態や生活の様子を確認したうえで、通院のペースの目安についてご説明します。
Q6.外出するのが不安で、一人で行けるか心配です。
ご家族に付き添っていただくことも可能です。来院前に、現在の症状やご不安なことをご相談いただくこともできますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、回転しないふわふわ・ゆらゆらとした浮遊感や不安定感が、ほぼ毎日、3か月以上続く状態です。立位や動作、人混みや画面などで悪化しやすく、疲労や不安で変動するという特徴があります。
ただし、めまいは耳や脳の病気など、治療が必要な原因で起こることもあるため、「慢性のめまい=PPPD」と自己判断せず、まずは専門の医療機関で確認することが大切です。激しい頭痛、ろれつが回らない、手足のしびれ、顔のゆがみ、突然の聞こえにくさなどがある場合は、すぐに受診してください。
そのうえで、動くことを避けすぎない、睡眠や休息を整える、首肩のこわばりをゆるめるといったセルフケアを取り入れながら、病院での治療を続けていくことが基本です。鍼灸は、診断や治療に代わるものではありませんが、身体のこわばりや睡眠、疲労といった面を整える補助的な選択肢のひとつとなります。
当院は神戸市・明石市に店舗を構え、めまいや自律神経の乱れでお悩みの方への施術を行っております。「病院で治療を受けているが、身体面でも何かできることはないか」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。























