投稿日:2026年10月29日
電車や会議の前にお腹が痛くなるIBS|「また痛くなったら…」の不安を和らげる対処法
カテゴリ: 過敏性腸症候群

朝の通勤電車に乗った途端、お腹がきりきりと痛み出す。次の駅まで我慢できず、慌てて降りてトイレに駆け込んだ——。そんな経験をきっかけに、翌日から電車に乗ること自体が怖くなってしまった、という方がいらっしゃいます。
大切な会議や面接の前にも、同じことが起こりがちです。「また痛くなったらどうしよう」と考えるほど、お腹の調子が気になって、仕事にも集中できなくなってしまう。そのつらさは、経験した人でなければ分かりにくいものでしょう。
こうした症状は、IBS(過敏性腸症候群)の方によく見られます。この記事では、不安がお腹の症状とつながってしまう仕組みと、場面ごとの工夫、病院での考え方、そしてミントはり灸院としての考え方を、順番にお伝えします。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
「また痛くなったらどうしよう」|IBSの予期不安とは
腹痛→不安→緊張→腹痛の悪循環
IBSの方に多いのが、予期不安と呼ばれる状態です。まだ起きていないことに対して、「また同じことが起こるのでは」と不安を感じることを指します。IBSでは、次のような流れで悪循環に陥りやすいと説明されています。
・電車や会議の最中に、強い腹痛や便意を経験する
・「次も同じことが起きるのでは」という不安が生まれる
・その場面が近づくだけで、緊張が高まる
・緊張がお腹に伝わり、実際に症状が出てしまう
この循環が繰り返されるうちに、症状そのものより、「症状が出ること」への恐れのほうが大きくなっていくことがあります。

トイレのことばかり気になり、外出を避けてしまう
不安が強くなると、トイレの場所を頻繁に確認したり、必要以上に何度もトイレに行ったりするようになります。さらに進むと、電車や人の多い場所、長い会議を避けるようになり、生活の範囲が少しずつ狭まってしまうことも少なくありません。
不安を感じること自体は、自然な反応
一度でも、トイレに間に合わないかもしれない恐怖を味わえば、同じ場面で不安になるのは、ごく自然なことです。大切なのは、不安を「なくそう」と力むことではなく、不安とどう折り合いをつけていくかという視点です。無理に打ち消そうとすると、かえって意識が症状に向かい、お腹に敏感になってしまうこともあります。
真面目で几帳面な方に多いとされる
心理学の面からは、IBSになりやすい方には、物事をネガティブに捉えやすい「考え方のクセ」があり、真面目で几帳面な方に多いとも言われています。ただし、これは個人を責める話ではありません。責任感が強く、周囲に迷惑をかけたくないという気持ちが、緊張を強めている場合もあるのです。
なぜ不安でお腹に症状が出るのか|脳腸相関
脳と腸は、神経やホルモンを通じて、互いに影響し合っています。この関係を脳腸相関と呼び、IBSの病態を考えるうえで重要だとされています。
IBSの方では、ストレスを感じると症状が悪化するという関連が、そうでない方よりも強く見られることが報告されています。また、ストレスがかかったときに大腸の動きが活発になることも、確かめられています。さらに、お腹の刺激に対する脳の反応が強いことも指摘されています。
つまり、「緊張するとお腹が痛くなる」のは、気のせいでも、気持ちの弱さでもありません。体の中で実際に起きている反応なのです。このことを知っておくだけでも、「自分がおかしいのでは」という不安が、少し軽くなるかもしれません。
場面別のポイント|電車・会議・旅行・外食
ここでは、場面ごとの一般的な工夫をご紹介します。人によって合う・合わないがありますので、できそうなものから試してみてください。
通勤電車
・余裕を持った時間に家を出て、焦りを減らす
・各駅停車に乗る、途中駅のトイレの位置を事前に把握しておく
・混雑の少ない時間帯や、ドアの近くなど、降りやすい位置を選ぶ
「いざとなれば降りられる」と思えるだけで、気持ちが落ち着く方は多いようです。
会議・面接・試験の前
・始まる前に、余裕を持ってお手洗いを済ませておく
・直前の食べすぎや、冷たい飲み物は、体に合わないと感じる場合は控える
・開始前に、ゆっくり息を吐く呼吸を数回行う
旅行・外食
お手洗いの場所を事前に確認しておく、予定を詰め込みすぎないようにする、といった準備が、安心感につながります。「できるだけ備えた」という実感が、予期不安をやわらげる助けになるのです。
職場や身近な人に、伝えておく
お腹の症状は、人に話しにくいものです。ただ、信頼できる上司や同僚、ご家族に、「お腹の調子が悪くなることがある」と一言伝えておくだけで、気持ちがずいぶん楽になる方もいます。席を外しやすい環境があるという安心感が、緊張をやわらげ、結果として症状が出にくくなる場合もあるのです。すべてを打ち明ける必要はありません。話せる範囲で、話せる人にだけで十分です。
まず確認|IBSは何科?受診の目安
お腹の不調が続くときは、まず消化器内科を受診してください。IBSは、大腸に炎症や腫瘍などの異常がないことを確認したうえで診断されます。
次のような症状がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。早めに受診しましょう。
・便に血が混じる
・発熱を伴う
・半年以内に3kg以上、体重が減った
・50歳を過ぎてから、初めて症状が出た
心の面からのアプローチ|認知行動療法と腸向け催眠療法
予期不安が強いIBSでは、心の面からのアプローチも有力な選択肢です。2020年に発表された、41件の研究・約4,000人を対象にしたメタ解析では、IBSに最も効果的な心理療法として、認知行動療法と、腸に焦点を当てた催眠療法が挙げられました。日本のガイドラインでも、薬で十分でない場合に、認知行動療法などの心理療法を行うことが位置づけられています。
考え方のクセを見直す認知行動療法
認知行動療法は、症状の背景にある「考え方のクセ」を、自分で客観的に把握し、より柔軟な見方に変えていく方法です。リラクゼーションやストレスへの対処法、腸と脳のつながりに関する知識なども含まれます。
大まかな流れは、次のようなものです。
・書き出す|症状が出たときの行動と、そのときの気持ちを記録する
・客観的に見直す|記録をもとに、実際に起きたことと、頭の中で膨らんだ心配を分けて眺める
・別の見方を探す|「また必ず起こる」という考えを、より現実的で柔軟な考えに置き換える
・心の余裕を持つ|不安が小さくなることで、お腹の症状もやわらぎやすくなる
実際の進め方は、専門家と相談しながら、ご自身に合った形で行うことが大切です。
腸に焦点を当てた催眠療法
催眠状態の中で、消化管の働きに意識を向ける方法です。専門の訓練を受けた施術者のもとで行われます。海外の資料では、腹部の症状や不安の改善が報告されていますが、根拠の確実性は高くないとされています。
心療内科や臨床心理士に相談する
こうした心理療法は、心療内科や、心理の専門家のいる医療機関で相談できます。不安や気分の落ち込みが強いときは、消化器内科とあわせて、心療内科への相談も検討してみてください。
自分でできる第一歩|症状と気持ちの記録
専門的な治療を受ける前でも、自分でできる方法があります。症状が出た日の状況と、そのときの気持ちを、簡単に書き出してみることです。記録を続けると、「痛くなる日より、ならない日のほうが多い」「実は思っているほど、困った場面は多くない」といった事実に気づく方もいます。気づきは、不安をやわらげる最初のきっかけになります。
研究で見る鍼灸|分かっていること
IBSに対する鍼灸の効果は、多くの研究で調べられていますが、結果は一致していません。偽の鍼と比べた研究では、症状や生活の質を改善するという有効性は確認されていません。一方で、薬物療法との比較では、鍼のほうが良い結果を示した研究もあります。ただし、患者さんの期待や好みが影響した可能性が否定できず、研究の質も、低〜中程度とされています。
ミントはり灸院の考え方|体の緊張から、不安の悪循環を支える
ここからは、研究で確かめられた内容ではなく、ミントはり灸院としての考え方をご紹介します。
不安が強いと、体もこわばっている
予期不安が強い方を拝見していると、体にも共通した特徴が見られることが少なくありません。
・首や肩、背中がこわばっている
・呼吸が浅く、胸やお腹のあたりに力が入っている
・お腹がかたく張っている、または冷えている
・眠りが浅く、疲れが抜けにくい
体をゆるめて、安心しやすい状態をつくる
不安は心の問題と思われがちですが、体の緊張が強いと、気持ちも落ち着きにくくなります。当院では、触診で全身の状態を確認し、やさしい刺激で体の緊張をゆるめることで、安心しやすい状態をつくるお手伝いをしています。鍼灸でIBSそのものを治すというより、不安の悪循環を止める「体の側のケア」という位置づけです。IBSの発症回数を少なくすることで、不安を小さくします。予期不安が小さくなることで症状は少しずつ改善していくわけです。
病院の治療や心理的なアプローチと併用する
鍼灸は、病院での診断や治療、心理療法に代わるものではありません。当院では、これらと併用していただくことをおすすめしています。お薬は、医師の指示に従って続けてください。
日常でできるセルフケア
・ゆっくり息を吐く呼吸|吐く息を長めにすると、体の緊張がゆるみやすくなる
・睡眠と入浴|ぬるめのお風呂にゆっくりつかり、睡眠時間を確保する
・記録をつける|症状と気持ちを簡単にメモして、自分の傾向を知る
・外出前の準備|トイレの場所の確認など、できる備えをして安心感を持つ
完璧を目指す必要はありません。できることを、できる範囲で少しずつ積み重ねていくのが、予期不安とつきあう近道です。
調子の良い日に、「今日はうまくいった」と気づく習慣も、意外に大切です。症状が出た日ばかりを数えていると、「いつも調子が悪い」という印象が強くなってしまいます。うまくいった日、気持ちが楽だった日にも、目を向けてあげてください。
よくある質問
Q. 不安のせいで外出できなくなってきました。どうすればいいですか?
避ける場面が増えていくと、生活の範囲が狭まっていくことがあります。早めに消化器内科や心療内科に相談してください。一人で抱え込まないことが大切です。
Q. お薬は飲んだほうがいいですか?
症状の程度や型によって、適した薬は異なります。自己判断で始めたり、やめたりせず、医師に相談してください。
Q. 鍼灸と心理療法は併用してもいいですか?
併用していただくことは可能です。通院している医療機関には、鍼灸の予定もあわせてお伝えいただくと安心です。
Q. 症状が出るのが怖くて、食事を極端に減らしています。大丈夫ですか?
食べるものや量を自己流で制限し続けると、栄養が偏ったり、体力が落ちたりするおそれがあります。まずは、症状の出方と食事の関係を記録して、医師や管理栄養士に相談してください。
Q. 電車に乗るのが怖いのは、IBSのせいですか?
IBSの方に、予期不安から電車を避ける傾向が見られることは知られています。ただ、原因は人によって異なります。IBSが全ての原因と思いすぎないことも大切です。
まとめ
電車や会議の前にお腹が痛くなるIBSは、脳と腸が影響し合う脳腸相関が背景にあり、「また痛くなったら…」という予期不安が、悪循環をつくりやすいのが特徴です。気のせいでも、心が弱いせいでもありません。
まずは消化器内科で、ほかの病気がないことを確認し、必要に応じて、認知行動療法などの心理的なアプローチも検討してみてください。鍼灸の効果は、研究では確実とは言えませんが、当院では、体の緊張をゆるめて安心しやすい状態をつくる補完ケアとして、併用をおすすめしています。つらさが強いときは、一人で抱え込まず、病院にも相談してください。
ミントはり灸院(神戸・明石)では、IBSに伴う不安や体の緊張に目を向けながら、一人ひとりの状態に合わせた鍼灸ケアを行っています。病院での治療との併用を歓迎しておりますので、お気軽にご相談ください。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。























