投稿日:2023年11月21日 / 更新日:2025年10月30日
手術跡がチクチク痛むのはなぜ?原因・いつまで続く・対処法を解説
カテゴリ: しびれ・神経痛

手術跡がチクチク痛む3つの主な原因
手術跡がチクチク痛むのは、決して珍しいことではありません。
手術後しばらくしてから、または時間が経ってから「チクチク」「ピリピリ」とした痛みを感じる人も多くいます。
この痛みは「もう治っているはずなのに…」と不安に感じることがありますが、多くの場合は回復過程の一部として起こるものです。
ここでは、手術跡がチクチク痛む主な原因を3つに分けて解説します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
原因1:癒着(皮膚や皮下組織の”くっつき”)
手術のあとのチクチクした痛みの多くは、皮膚や皮下組織の「癒着(ゆちゃく)」によって起こります。
手術で皮膚を縫い合わせた部分では、回復の過程で皮膚繊維が増殖し、傷跡が周囲の皮膚を引っ張るようになります。
特に肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドのように皮膚が盛り上がって治るタイプでは、関係のない皮膚や皮下組織まで巻き込みながら新しい皮膚が作られます。
その結果、皮膚がこれまでとは違う方向に引き連れ、チクチクとした痛みや違和感が続くのです。
縫合部分(糸で縫った部分)は癒着しやすく、傷口そのものよりも痛みを感じやすくなることがあります。
原因2:神経の過敏化(回復過程でのチクチク・ピリピリ)
もうひとつの原因は、手術中に感覚神経の先端が切断されることによるものです。
開腹手術などでは、皮膚だけでなくその下を走る神経も一緒に切られます。手術直後はその部分が麻痺しているため、ほとんど何も感じませんが、時間が経って神経が再生しはじめると、再生直後の神経が過敏になり、ピリピリ・チクチク・ヒリヒリとした独特の刺激を感じるようになります。
この感覚は通常、術後数ヶ月のあいだに現れますが、体質や回復の度合いによっては数年後に出る場合もあるといわれています。
ただし、ズキズキするような強い痛みを伴う場合は、別の炎症や神経障害が関係していることもあるため注意が必要です。
原因3:外部刺激(乾燥・衣類の摩擦・天候変化)
術後の皮膚は非常にデリケートな状態で、乾燥や衣類との摩擦、季節の変わり目などによる気温・湿度の変化が刺激となってチクチクとした痛みを引き起こすことがあります。
特に乾燥すると皮膚表面が突っ張り、傷跡部分の神経が刺激されやすくなります。
また、きつい服や下着が当たることで癒着している部分が引っ張られ、痛みが強まることもあります。
このような外的要因による痛みは一時的なものが多いですが、繰り返されると神経の過敏化を助長することもあるため、保湿や衣類の見直しなどで刺激を減らすことが大切です。
この痛み、いつまで続く?期間の目安と長引くケース
手術跡のチクチクした痛みは、「いつまで続くのか」と不安になる人も多いですが、多くの場合は体の回復過程で一時的に起こるものです。
痛みの強さや続く期間は、手術の部位や範囲、体質、生活習慣によっても変わります。
ここでは、一般的な経過の目安と、長引くときに注意すべきポイントを紹介します。
手術跡がチクチク痛む場合の一般的な経過の目安
手術直後は麻酔や神経の切断によって感覚が鈍くなっており、痛みを感じにくい状態です。
しかし、神経の再生が始まる術後1~3か月ほどで、チクチク・ピリピリ・ヒリヒリといった違和感を感じる人が多くなります。
これは神経が再びつながる際の一時的な反応であり、通常は数週間~数か月で落ち着いていきます。
癒着による皮膚の引き連れが原因の場合も、術後6か月~1年ほどで組織が柔らかくなり、痛みが和らぐケースがほとんどです。
一方で、手術の範囲が広い場合や、ケロイド体質・乾燥肌などの人では、回復に時間がかかり、違和感が1年以上続くこともあります。
長引くときに考えるべきこと
チクチクした痛みが半年以上続く場合や、むしろ時間が経つにつれて強くなる場合は、単なる回復反応ではない可能性があります。
代表的な要因としては、次のようなものが考えられます。
・傷跡の下で皮膚や筋膜が癒着し、引きつれが強くなっている
・神経が過敏化して「神経障害性疼痛」に移行している
・縫合部や周囲に慢性的な炎症が残っている
・衣類や姿勢のクセによって、常に刺激を受けている
また、手術跡の部分が赤く盛り上がる・かゆみを伴う・天候によって痛みが強くなるといった場合も、専門的な治療が必要なサインです。
放置すると、痛みが慢性化してしまうこともあるため、気になる症状が続く場合は早めに医療機関で相談することをおすすめします。
痛みの慢性化によるストレスは非常に大きく生活に支障をきたす場合もあるので、術後の通院などで担当医に遠慮することなく相談しましょう。
チクチク痛む手術跡のセルフケア方法
手術跡のチクチクした痛みを和らげるには、皮膚や神経への刺激を減らし、回復をサポートするセルフケアが大切です。
日常のちょっとした工夫で、痛みの軽減や再発防止につながることがあります。
ここでは、自宅でできる5つのケア方法を紹介します。
方法1:保護テープ・シリコンジェルで傷跡を保護
傷跡を直接刺激から守ることはとても重要です。
医療用の保護テープやシリコンジェルシートを使うことで、摩擦や乾燥から皮膚を守り、癒着や盛り上がりを防ぐ効果があります。
特に衣類が擦れる場所や、体を動かすたびに引き連れ感が出る部位には有効です。
入浴後に水分を拭き取り、清潔な肌に貼るようにしましょう。
方法2:保湿ケアで肌バリアを強化
乾燥した皮膚は刺激に敏感になり、チクチク・ピリピリを感じやすくなります。
保湿クリームやワセリンを使って皮膚のうるおいを保ち、外からの刺激を減らしましょう。
特に入浴後は皮膚が乾きやすいため、3分以内に塗るのが効果的です。
ただし、かゆみや赤みが強いときは刺激の少ない低刺激タイプを選びましょう。
方法3:温める・冷やすの使い分け
痛みの種類によって、温めるか冷やすかを使い分けるのもポイントです。
炎症を伴うようなズキズキする痛みや赤みがある場合は冷やすことで炎症を抑えられます。
一方で、癒着による引きつれ感や血行不良によるチクチク感には、温めて血流を促すほうが効果的です。
温タオルやカイロなどを短時間あてて、じんわり温める程度が理想です。熱いほうが効果があるというわけではありません、低温やけどにならないように注意して下さい。
方法4:締め付けの少ない衣類選び
タイトな服やゴムの強い下着は、傷跡を圧迫したり摩擦を起こしたりして痛みを悪化させることがあります。
ゆったりとした衣類や、肌ざわりのやわらかい素材(綿やシルクなど)を選ぶことで、刺激を最小限に抑えることができます。
下着やウエスト部分がちょうど傷跡に重なる場合は、位置をずらしたり、テープで保護して対策をとるのもおすすめです。
方法5:軽いストレッチで可動域を維持
長期間動かさずにいると、皮膚や筋膜が硬くなり、癒着による痛みが続くことがあります。
無理のない範囲で腕や体を伸ばすなど、軽いストレッチを行って血流を促し、可動域を保ちましょう。
特に入浴後や体が温まっているときに行うと効果的です。
ただし、ストレッチの際に痛みが強く出る場合はやめておきましょう。
これらのセルフケアを続けることで、手術跡のチクチクした痛みをやわらげます。
ただし、痛みや赤みが強くなったり、違和感が長く続く場合は、自己判断せず担当医に相談してください。
病院での治療
手術跡のチクチクした痛みが長く続く場合や、傷口が赤く盛り上がってきた場合には、自己ケアだけでなく医療機関での治療が必要になることがあります。
ケロイドや肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)と呼ばれる状態では、皮膚が過剰に盛り上がり、かゆみや痛みを伴うことがあります。そのような場合には、ステロイド外用薬(塗り薬)を使って炎症や線維の増殖を抑える治療が行われます。症状が進行している場合や、薬では改善が難しいときには、外科的な切除やレーザー治療を行うこともあります。
一方、傷跡が見た目に問題なくても痛みが続く場合には、神経の過敏化が関係していることがあります。こうした痛みには、一般的な鎮痛薬(ロキソニンなど)では効果が少ないことが多く、抗うつ薬や抗けいれん薬など、神経の興奮を抑える薬が処方されることがあります。場合によっては、リハビリや認知行動療法を組み合わせて、体と心の両面から痛みの軽減を目指すこともあります。
手術後の痛みを「仕方がない」と我慢してしまう人は少なくありませんが、早めに相談することで改善するケースも多くあります。
近年では、病院側も術後の痛みに対してより積極的にケアを行うようになっており、専門的な「ペインクリニック」や「形成外科」での治療も選択肢のひとつです。
痛みが気になる場合は我慢せず、早めに主治医へ相談するようにしましょう。
診察で伝えるべき3つのポイント
診察を受ける際には、痛みの状態をできるだけ具体的に伝えることが大切です。
以下の3つのポイントを押さえておくと、医師が原因を特定しやすくなり、より適切な治療方針を立ててもらえます。
◯痛みの性質と強さ
チクチク、ピリピリ、ズキズキなど、どんな種類の痛みかを言葉で説明しましょう。強さを10段階で表すと、より伝わりやすくなります。
◯痛みの出るタイミングや状況
安静時でも痛むのか、動かしたときだけなのか、季節や天候、衣類の摩擦などで変化があるかを伝えます。これにより、神経や癒着などの関係を見極めやすくなります。
◯痛み以外の症状や変化
かゆみ、赤み、盛り上がり、しこり、しびれなど、痛み以外に感じる違和感も重要な情報です。見た目の変化をスマートフォンで撮影しておくと、診察時に役立ちます。
こうした情報を正確に伝えることで、原因の特定や治療方針の決定がスムーズになり痛みで悩む期間が短くなります。
鍼灸での治療とは?
痛みの本質は皮膚や筋肉の緊張です。傷口が回復する中で皮膚が癒着するなどして、皮膚の緊張などによって痛みが起きやすい状態にあります。
それも時間経過とともに少しずつ改善していくでしょう。ただ、数年経過してから痛みが出たり、痛みそのものに波があって酷くなることもある場合だと、別の要因が影響して痛みを起こしている可能性があります。
それが、内臓疲労です。内臓が疲労していると皮膚や筋肉に緊張を起こします。そこに敏感な手術跡が重なることで痛みや痒みなどが起きるのです。内臓疲労から発生する筋肉の緊張の場合は自覚症状としてもわかりにくいので、発見が難しいとされています。
内臓疲労による痛みは抗痙攣、抗うつ剤といった、神経系に作用する薬などで効果が出やすくなるので、そういったアプローチを西洋医療でも行っているということは内臓疲労が関わっている可能性があります。
もちろんの投薬のアプローチは対処療法にしかならず、痛みを起こしている場所と関係のある内臓疲労を取り除くことが術後の痛みの改善に必要になります。
手術跡の痛みに悩んだ人の体験談
ある患者さんは、脳の開頭手術を受けたあと、手術した側の首のチクチクとした痛みに長い間悩まされていました。
手術自体は無事に終わり、経過も良好といわれていたものの、退院後もしばらく首の違和感が続き、首を動かすたびに痛みが出るようになったそうです。
病院で相談しても「手術跡と首の痛みには関係がない」と説明され、痛み止めを出されるだけで根本的な改善には至りませんでした。
そこで、別の角度から原因を探るために当院へ来院されました。
詳しく触診を行ったところ、手術の際にできた頭部の縫合跡から首にかけて皮膚の引きつれが強く、さらに喉まわりの筋肉にも強い緊張が見られました。
これは、手術による皮膚の癒着と、仕事による首の筋肉に負担と喉の炎症による皮膚の緊張などが複合して負担がかかったことが影響していると考えられました。
治療では、喉の緊張をやわらげる施術と、手術後に硬くなっていた皮膚の柔軟性を取り戻すための鍼灸を行いました。
初回の施術後から少しずつ首の動きがスムーズになり、2週間ほどでチクチクした痛みがほとんど感じなくなるまでに改善しました。
このケースのように、手術跡そのものではなく、周囲の皮膚や筋肉の緊張が原因で痛みが続くことも少なくありません。
「手術とは関係ない」と言われた痛みでも、体全体のつながりを見ていくことで原因が見えてくる場合があります。
よくある質問
当院で手術後の痛みで悩む人からよくある質問について紹介します。
手術から数年後に突然チクチク痛むことはありますか?
はい、あります。
手術直後は神経が切断されて一時的に麻痺しているため痛みを感じませんが、その後、神経がゆっくりと再生していく過程で、数ヶ月~数年たってからチクチク・ピリピリとした痛みが出ることがあります。
ただ多くの場合が神経の回復よりも、患部に関係する内臓や筋肉によっておきていることがほとんどです。偶然にも手術跡があったという場合が多いようです。
傷跡が赤く盛り上がり、かゆみもあります。これは何ですか?
それは「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」または「ケロイド」と呼ばれる状態の可能性があります。
どちらも皮膚の回復過程で線維が過剰に増え、皮膚が硬く盛り上がることで起こります。
見た目の赤みやかゆみ、チクチクした痛みを伴うことが多く、放っておくと広がる場合もあります。
このような症状には、ステロイド外用薬やシリコンジェルシートを使って炎症を抑える治療が行われます。
状態が進行しているときは、形成外科での治療(注射やレーザーなど)が必要になることもあります。
最近は湿潤療法によって、ケロイドを防ぐ取り組みが当たり前になってきました。通院や自宅でのケアに手間がかかりますが、その後の痒みや傷跡を防ぎますので頑張ってケアを続けましょう。
痛みは我慢すれば治りますか?
基本的に、痛みを我慢しても自然に治るとは限りません。
一時的な違和感であれば様子を見ても構いませんが、数週間?数ヶ月続くようであれば、神経や皮膚に慢性的な問題が生じている可能性があります。
痛みが長引くと、脳が「痛みを覚えてしまう」状態になり、少しの刺激でも強く感じるようになることがあります。
こうした慢性化を防ぐためにも、早めに専門家に相談して原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。
まとめ
手術跡のチクチクとした痛みは、多くの人が経験するごく自然な回復過程の一部です。
皮膚や皮下組織の癒着、神経の再生に伴う過敏化、あるいは乾燥や摩擦などの外的刺激が原因で起こることがほとんどで、時間の経過とともに落ち着いていく場合が多く見られます。
しかし、痛みが長期間続く場合や、むしろ時間が経つほど強くなる場合には注意が必要です。
こうした状態が続くと「遷延性術後痛(せんえんせいじゅつごつう)」と呼ばれる慢性的な痛みに移行することがあります。
これは、手術によって損傷を受けた神経が過敏化し、傷が治っても脳が「痛みを覚えたまま」になってしまう状態です。
遷延性術後痛になると、ちょっとした刺激でも強く痛みを感じたり、日常生活に支障が出ることもあります。
そのため、「少しチクチクするだけだから」と我慢せず、早い段階で原因を見極めて対処することが大切です。
小さな痛みのうちに、保護テープや保湿ケアなどのセルフケアを行ったり、医療機関に相談して適切な治療を受けることで、慢性化を防ぐことができます。
また、鍼灸による血流改善や筋膜リリースなどの施術は、神経や皮膚の緊張をやわらげ、遷延性術後痛の予防にも役立つと考えられています。
痛みを「仕方がない」と思わず、小さな違和感のうちに対応することが、回復を早める最大のポイントです。
体のサインを見逃さず、早期のケアと専門的なサポートで、術後も快適な生活を取り戻しましょう。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。































