ミントはり灸院・自律神経の乱れと鍼灸:なぜ効くのか?どう整えるのか?

2025年5月2日

自律神経の乱れと鍼灸:なぜ効くのか?どう整えるのか?

カテゴリ: 自律神経失調症

自律神経の乱れと鍼灸

自分の体の不調を「自律神経が乱れていて」と考えて鍼灸院を探している方は少なくないです。

病院に行ってもこれといった原因もなくお医者さんからも「自律神経が乱れているんだろうね」と言われてこれと行った処方もない。

途方にくれて調べてみると鍼灸が良いって書かれていて、そこで初めて知る方が多いのではないでしょうか?

実際に当院でも問い合わせは多くて、毎週2、3名の新規の方が自律神経の不調を訴えています。

そもそも、鍼灸が自律神経の乱れへの改善が得意なのか不思議ですよね。今回は鍼灸と自律神経について解説していきます。

院長 森本 賢司

この記事の執筆者

ミントはり灸院 院長
森本 賢司

高度専門鍼灸師

【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師

【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証

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自律神経ってそもそも何?

まず解剖学、生理学的に自律神経とは何か?について解説します。

自律神経っていうのは、意識しなくても体の中で勝手に働いてくれている神経のこと。たとえば、心臓がドキドキしたり、汗が出たり、胃が食べ物を消化したりするのも、この自律神経のおかげなんですね。

自律神経には「交感神経(こうかんしんけい)」と「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」っていう2つのタイプがあります。交感神経は、緊張したときやびっくりしたときに働いて、体を戦いモードにする神経。逆に副交感神経は、リラックスしているときや寝る前に働いて、体を休ませてくれる神経と言われていますが実はそうとは限りません。

神経には役割に応じて名前がついています。例えば脳神経は脳から直接出ている神経のことで主に顔面部に集中しています。
感覚神経は皮膚などの感覚器で運動神経は筋肉です。
じゃあ、自律神経はというと主に内臓につながっている神経ということになります。

内臓の働きというのは意識していて動かすものではありませんので、無意識の自動調整されていることが多いので自律神経とも言われているわけです。

交感神経と副交感神経の働き

一般的に交感神経は興奮で副交感神経はリラックスと言われていますが、ちゃんと神経生理学を勉強していたならそうとは言えません。

もし、我々と同業の方でそのような表現をしている人がいたら、生理学をちゃんと勉強していない人かもしれません。

なぜ興奮やリラックスではないかと言うと

例えば、食事中はリラックスしてるように見えるけど、体の中では胃や腸がしっかり動いて消化してますよね。これは副交感神経の働き。でも、けっして“体が休んでる”わけじゃない。逆に、交感神経が働いてるときは心拍数が上がったり、血圧が高くなったりしますが、それは体が戦う準備や集中するためのモードに切り替わっているだけで、「常に緊張=悪いこと」ではありません。

他にも瞳孔を調整する神経は交感神経と副交感神経がありますが、スマホを見るときに光に応じて瞳孔を閉じる必要がありますが、そのときは副交感神経が働いています。
必ずしもリラックスというわけではないですよね。

なので、正しくは

活動準備のために主に使われるのが交感神経
休息準備のために主に使われるのが副交感神経

となります。

自律神経が乱れる原因とは?

乱れるとはどのような状態を示しているかと言うと、意識で理解している状況と無意識で働いている交感神経神経で別々の働きをしている状態といえます。

食事をしたのに、胃腸の活動低下になると、消化が遅くなって胃がもたれます。
寝ようと思っているのに、目の瞳孔が開いたままだと、視野が明るく感じて脳が興奮します。

このように本来は状況に合わせて、自動的に準備をするはずがそれができていないのが自律神経が乱れているというわけです。

なぜ乱れてしまうのか?それは状況を正しく捉えられていないか、自律神経からの命令に内臓が働いてくれていないか、そのどちらかになります。

状況を正しく捉えるのは脳神経や感覚神経につながる受容器です。皮膚や目や耳などが今の状況を脳に伝えているわけです。

揺れる乗り物に乗っていると、どこかがまっすぐなのかわからなくなって、目の動きが激しくなってしまうことがあります。いわゆる乗り物酔いですが、これも自律神経の乱れと同じようなことが発生しています。

他にも痛みの情報が多いことで、他の感覚が弱く伝わってしまうこともあります。
これが感覚が正しく伝わっていない場合の自律神経の乱れです。

他にも自律神経によって働きを命令される内臓が疲れていて正しく動いてくれない場合もあります。

例えば食べ過ぎによる胃もたれもそうです。目が美味しい食べ物を見て、脳が食べる司令を出しますが胃は前日の食べ過ぎによって胃酸過多となり、胃の粘膜が傷んだりしていると胃は消化を頑張ろうとしません。
もし胃もたれのことを認識していなかったら人はそれを本能に基づいて食べてしまいます
ので、食べてから消化されずに「気持ち悪い感覚」になって食事をやめてしまうのです。

それが食べたいけど食べられないという、代表的な自律神経の乱れである食欲不振です。

鍼灸が自律神経に効く理由

これまでメカニズムとして発揮しているなら薬でなんとかなりそうですよね。
ただ、これを病院で判別するのはとても難しく、お医者さんとしても何が問題なのかはっきりしないことで薬を処方しずらくなるわけです。

なぜ判別が難しいかと言うと、自律神経は自動的に動いているわけなので、同じ状況にならないと問題が発動されないことにあります。

病院に来たときに自律神経の乱れによる症状が出れば、その瞬間を検査することで問題を対処できるでしょうが、自律神経の乱れは突然やってきたり、ふいに不調に襲われたりするので、患者さんも説明しづらくお医者さんも理解しずらいわけです。

そこに対して鍼灸は問診や検査を通して、機械だけでは見つからない体の小さな変化に着目しているので問題箇所を見つけることができます。

たとえ自律神経が乱れる状況でなくとも、乱れたときに発生した内臓の不調などは何かしら体にサインを残しているからです。そのサインが出ている場所をツボと表現することがあります。

ツボ刺激と神経の関係

鍼灸が皮膚に刺激をする場所というのは全てではありませんが、内臓や感覚器への回復を促すことができます。
それが効率的に行われる場所がツボです。

ツボには、神経終末が密集していたり、筋膜や血管が交差するポイントに位置することが多く、刺激に対して反応しやすい構造になっています。自由神経終末やポリモーダル受容器と呼ばれる痛みを感じるセンサーがツボ周囲に多く存在し、鍼による刺激が脊髄や脳へと伝えられます。

このとき、自律神経系を含む中枢神経に影響が及ぶことで、血流の改善や内臓機能の調整、痛みの抑制などが起きます。

たとえば、肩こりのツボで有名な「肩井」に刺激すると、筋緊張の緩和だけでなく、交感神経の活動が落ち着き、末梢血管が拡張することで血行が良くなることがわかっています。

科学的根拠・研究事例

自律神経失調症患者の胃腸症状、頭痛、めまいが鍼灸治療後に有意に改善(Kawakita et al., 2008

こちらの研究論文では1症例報告ではありますが、改善した事例を報告しています。

他にも自律神経と鍼灸に作用について解説した論文も複数出されています。

ツボと内臓機能の回復などの論文は多数あって、胃運動の改善や目の動きの改善などさまざまな部位について報告されています。

自律神経の乱れのメカニズムでも解説しましたが、受容器と内臓機能がポイントになりますのでこういった報告が自律神経の乱れの症状の一つ一つに対応していることがわかるのではないでしょうか?

自律神経を整えるためにできること

自律神経が乱れているとき=生活の乱れ(不規則な生活やストレス)と考える方が多いのですが、本来は内臓機能の低下です。

もちろん生活を整えることは内臓機能の回復になりますので、自律神経の乱れの改善になりますが間接的な効果を期待するので少し遠回りになるかもしれません。

なので直接的な方法として、自律神経が乱れたと感じたときに最初に感じる症状だけを徹底的にケアしていくことをおすすめします。

胃がもたれるなら、胃酸を抑えたり、胃の働きをよくする薬を飲むことも効果があります。
頭痛がするなら、首の筋肉を普段から軽くマッサージしてみてください。

生活習慣+鍼灸の併用

問題は自律神経の乱れを引き起こす要因への対策です。
これは身体のことを知らない人が自分の身体を冷静に分析するのは難しいです。
なぜなら、無自覚なきっかけと自覚症状のアンバランスが自律神経の乱れだからです。

自覚できるところは前のところでも書いた通りで、不調のところをケアしましょう。
無自覚なところは自分では見つけることが難しいので、ここはプロに頼るところです。

自律神経の不調に対応している鍼灸師であれば、きっかけを簡単に見つけてくれますので、根本改善を目指すべくここは専門家の力を活用しましょう。

六甲道本院
三ノ宮院
明石院

継続的なケアの大切さ

自律神経の乱れというのは神経の接続がおきているということで、不調を感じる→弱っている内臓への負担という接続です。

これは長期化すると神経の特徴で接続の強化がおきます。

例えば、緊張すると顔が赤くなるというのも、最初は気にならないほどだったのが徐々に症状が強くなることがあります。

顔の赤みが発症するかしないかなので程度が悪化することはないのですが、長期化することで神経の伝達スピードが早くなってしまって、ちょっとしたことで紅潮してしまうわけです。

最初よりもどんどん頻繁に症状が出るような状態になります。

この接続を弱めていくことも自律神経の乱れの改善には重要になります。
内臓の不調が改善されたとしても神経の接続が強いままだと、何かのきっかけですぐに再発する可能性があるからです。

だからこそ継続的なケアが必要になります。セルフケアとプロケアを並行して進めて、自律神経の乱れによる不調から卒業しましょう。

当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。