ミントはり灸院・リウマチに市販のサプリメントは効果あり?

投稿日:2020年4月16日 / 更新日:2025年12月11日

リウマチに市販のサプリメントは効果あり?

カテゴリ: 関節リウマチ・膠原病

ミントはり灸院には、毎月数名の関節リウマチの方が新たにご相談に来られます。多くの方がすでにサプリメントや漢方を併用されており、その中で「鍼灸師の視点ではサプリメントをどう考えるのか?」というご質問をいただく機会が増えています。

本稿では、当院が専門職としてお答えできる範囲を明確にしながら、サプリメントとの向き合い方や東洋医学的な捉え方を整理してお伝えします。 サプリメントは“過度な期待を持たず、適切に継続することで価値が生まれるもの”です。

鍼灸施術や日常のセルフケアと合わせて理解していただくことで、より良い体調管理に役立てていただけると考えています。 皆さまの判断材料としてお役に立つ内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。

院長 森本 賢司

この記事の執筆者

ミントはり灸院 院長
森本 賢司

高度専門鍼灸師

【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師

【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証

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リウマチのサプリメントについてのよくあるご相談

治療薬を飲みながら生活していると、「少しでも体の負担を軽くしたい」「炎症を抑える助けになるものはないか」と考えるのは自然なことです。ネットや動画、口コミでさまざまな情報に触れるほど、何を選べばよいのか迷われる方が多い印象です。

具体的には次のようなお悩みが多いようです。

・処方薬と併用して大丈夫なのか心配

 メトトレキサートや生物学的製剤を使っているけれど、サプリは飲んでもいいのか、副作用に影響しないか?

・どのサプリが自分に合っているのかわからない

 オメガ3、ビタミンD、ターメリックなどが良いと聞くものの、情報が多すぎて選べず、結局何も始められない。

・飲み始めてどれくらいで効果が出るのか

 痛みや腫れに変化があるのか、いつ頃から実感できるのかなど、具体的な期待値を気にされる方が多いです。

・本当に続ける意味があるのか

 即効性がないため、今の自分に必要なのか、続けるべきか迷われる方もおられます。 ・鍼灸との併用で体質改善につながるのか  サプリと鍼灸を組み合わせた際の相乗効果を期待して質問がある場合も。

リウマチでサプリメントを飲んでも大丈夫?

関節リウマチと向き合っている方の多くが、サプリメントに興味を持たれています。実際、インターネット上には「リウマチに良い」とされるサプリメントが数多く紹介されており、ドラッグストアでも手軽に購入できることから、患者さんの約3割が何らかのサプリメントを摂取しているとも言われています。

ただし、こうしたサプリメントが「どこまでリウマチに役立つのか」は明確ではありません。サプリメントの正式な位置づけは“栄養補助食品”であり、アメリカでは食品の一種として扱われています。

つまり、本来は“普段の食事で不足しがちな栄養素を補うためのもの”であって、病気そのものを治療する目的で設計されているわけではありません。

そのため、サプリメントを摂ること自体は健康づくりの一環として悪いことではありませんが、リウマチの治療効果を期待して飲むのは誤解につながりやすい部分です。リウマチは専門的な薬物療法が必要になる疾患であり、サプリメントだけで炎症を抑えたり、進行を止めたりすることはできません。

一方で、食生活では摂取しづらい栄養素を補うという意味では、サプリメントは役に立つことがあります。たとえば水溶性ビタミンの補給や、魚が苦手な方がDHA・EPAをサプリで取り入れることなどは、日々の体調管理にプラスに働く場合があります。

要するに、サプリメントは“治療薬の代わり”ではなく、“不足しがちな栄養を補い、体調の土台を整えるための補助的な存在”として捉えることが大切です。

鍼灸師としてお答えできること・できないこと

サプリメントや漢方については、他の治療家の中には「リウマチに効く」「病気が良くなる」といった形で推奨するケースがあります。しかし、これは本来の役割を大きく誤解した伝え方です。サプリメントも漢方も、医薬品のように病気そのものを治す力を目的としているわけではありません。

鍼灸師としてお伝えすべきことは、

“病気を治すための手段としてサプリを勧める”のではなく、

“健康の土台を支える栄養を補完する方法としてサプリを活用する”

という正しい位置づけです。

特にサプリメントは、食事だけでは補いにくい栄養素を手軽に摂るためのものであり、あくまで生活習慣の一部です。治療そのものを代替するものではありません。鍼灸師が患者さまに誤解を与えないよう、専門職としての説明責任が求められます。

また、鍼灸は「西洋医療の反対側」にあるものではありません。 関節リウマチのように医学的治療が必要な疾患において、鍼灸は薬物療法を妨げる存在ではなく、治療をサポートする補助的なアプローチとして位置づけられます。

私たちは、主治医を中心とした医療チームの一員として患者さんに関わる立場です。 ・薬の調整や診断は医師が担当する ・栄養補完の考え方や生活習慣、体質面のケアは鍼灸師がサポートする といったように、それぞれの専門性を生かしながら連携することが大切です。

そのため、鍼灸師が独断で治療方針を決めたり、医師の治療を否定するような提案を行うことは適切ではありません。患者さんにとって最善の選択を支援するために、私たちは常に“補完的な役割”を意識してサポートを行っています。

サプリメント飲用前に主治医に相談

関節リウマチの治療を続けていると、「少しでも良くなりたい」「自分でできることは何でも試したい」という気持ちになるのは自然なことです。身近で購入できるサプリメントに目が向くのも、患者さんにとってごく当たり前の流れです。

しかし、リウマチに深く関係している“免疫の働き”を調整することは、サプリメントの役割ではありません。サプリメントはあくまで栄養補助食品であり、免疫をコントロールしたり、薬の作用に相当する効果を発揮するものではありません。

また、関節リウマチでは

・メトトレキサート

・生物学的製剤

・JAK阻害薬

など、免疫に作用する医薬品を使用していることが多く、サプリメントとの相互作用が問題になる場合があります。

「体に良さそうだから」

「自然のものだから安全だろう」

と自己判断で始めると、薬の効果や副作用に影響が出る可能性もゼロではありません。

そのため、サプリメントを摂ること自体は悪いことではありませんが、薬を服用している方は必ず主治医に相談してから始めることが安全上もっとも重要です。

主治医は薬の量・作用・副作用・検査値の変動を総合的に把握しているため、

・併用して問題ないのか

・どのタイミングなら安全か

・どの成分は避けるべきか

といった医学的判断を適切に行うことができます。

安全に治療を進めるためにも、自己判断ではなく、チーム医療の中心である主治医の意見を確認したうえでサプリメントを取り入れましょう。

東洋医学の視点から見た「体質」と栄養の関係

東洋医学では、関節リウマチのような慢性的な炎症や痛みは、単に「関節の問題」としてではなく、体質(=不調が起こりやすい臓腑の特徴)と深く結びついていると考えます。

体質とは、

・どの内臓が疲れやすいか

・どの機能が不足しやすいか

・どこに負担がかかりやすいか

といった、からだの”弱点”を指す概念です。

この「弱りやすい内臓」の背景には、必要な栄養が十分に足りていない、あるいは普段の食生活・生活習慣によって負担が蓄積しているケースも多く見られます。しかも本人が気づかないうちに徐々に弱っていくため、自覚症状が出る頃には体質として定着してしまっていることも珍しくありません。

リウマチを東洋医学ではどう捉えるか

東洋医学的にリウマチを捉えると、

・肝の弱り(血の巡り・筋肉や腱の栄養不足)

・小腸の弱り(免疫や吸収の不安定さ)

が背景に関係していると考えられます。

肝が弱ると、身体の巡りが滞り、筋や関節に十分な栄養が届きにくくなるため、こわばりや痛みが出やすくなります。小腸が弱ると、摂った栄養をうまく吸収・活用できず、免疫バランスの乱れにつながることがあります。

こうした「内臓の疲れ」に対して、東洋医学では体質に合わせて働きを助ける栄養を補うという考え方があります。サプリメントを用いる場合も、病気を治す目的ではなく、弱っている内臓の働きを支える“栄養の補完”として捉えることが大切です。

特に肝や小腸は免疫を安定化するための食事(サプリメント)がポイントとなります。

口から入れるものには全て免疫が関わる

免疫は、私たちが生命活動を維持するうえで欠かせない基本的な仕組みです。外から入ってくる細菌やウイルスだけでなく、食べ物を消化するときにも免疫が働いていることは意外と知られていません。サプリメントも「口から入るもの」である以上、消化の過程で必ず免疫システムと関わります。

このように、免疫は私たちの体に備わった自然な仕組みであり、自分の力で意図的に抑えたり調整したりすることはできません。

特にリウマチのように免疫が“過剰に反応してしまう”病気の場合、暴走を抑える手段は薬による治療に限られます。サプリメントで免疫そのものをコントロールすることはできない、というのが現代医学と東洋医学の共通した考え方です。

しかし、「自分でできることがない」というわけではありません。

免疫の働きには、小腸や肝臓といった臓器の状態が深く関わっているため、これらに余計な負担をかけない生活を心がけることは十分に意味があります。

特に重要なのが、

“食べすぎないこと”

です。

食べ過ぎると、消化のために小腸も肝臓もフル稼働しなければならず、それが臓器の疲労につながります。臓器が疲れると免疫のバランスも乱れやすくなるため、日々の食生活を整えることは、リウマチの方にとって非常に意味のあるセルフケアになります。

「何を摂るか」も大切ですが、「負担をかけない食べ方」を意識することが、結果として免疫の安定につながると東洋医学では考えています。

じゃあ、デトックスだと思って「酵素ドリンク」を考える人がいますが、残念ながら酵素ドリンクにはデトックス効果はありません。ファスティングのような、空腹時間をしっかり作るのは効果があります。

鍼灸施術と日常生活でできるセルフケア

当院で行っているリウマチの方への施術アプローチ

当院では、関節リウマチの症状に対して、関節そのものだけでなく「肝臓・小腸などの内臓の状態」まで踏まえた体質改善型のアプローチを行っています。リウマチは内臓の疲れが慢性的に蓄積している場合が多く、特に肝臓や小腸が弱っていると、免疫バランスが崩れやすくなり、痛みやこわばりにつながると考えています。

施術では、それぞれの内臓に対応する反応点(ツボ)に鍼やお灸で刺激を入れ、臓器の働きを整えることで、身体全体の循環改善を図ります。これにより、関節のこわばりや筋肉の緊張、血流の滞りなどを和らげ、症状の安定を促します。

また、鍼灸施術は単発で大きく体調を変えるというより、「継続的に積み重ねていくことで体質そのものを整えていく」ことを重視しています。

ご自宅でできる簡単なセルフケア

当院では、日常生活の中で取り入れやすいセルフケアも大切にしています。特に以下の3つは、多くの患者さんに実践していただいている基本的なケアです。

・食物繊維を多く摂る

 腸内環境を整えることは、小腸の負担を軽くし、免疫バランスを安定させるうえでとても重要です。野菜・海藻・きのこ類などを積極的に摂ることをおすすめしています。

・おへそまわりへのお灸

 お腹のお灸は内臓の働きを助け、消化吸収の負担を減らし、身体の土台を整える効果が期待できます。リウマチの方は小腸・肝臓が疲れやすいため、おへそ周りの温めは特に有効です。

・自然に触れる時間を作る(森林浴など)

 自然環境に身を置き、ゆったりと呼吸をするだけで、自律神経が整い、内臓の負担が軽くなります。さらに全身の炎症軽減効果もあります。ストレスが強いと肝臓にも負担がかかるため、自然に触れる時間を定期的に持つことがセルフケアになります。 これらのセルフケアを鍼灸と併用することで、症状の波を抑え、より安定した体調を維持しやすくなります。

六甲道本院
三ノ宮院
明石院

よくあるご質問(FAQ)

Q. 鍼灸でリウマチは治りますか?

リウマチは薬物療法が治療の中心となる病気であり、鍼灸だけで症状そのものを「治す」ことはできません。しかし、鍼灸には痛み・こわばりの緩和や、内臓の負担を減らす働きが期待でき、結果として症状が落ち着きやすくなることがあります。

鍼灸が目指すのは、リウマチの「寛解(病勢が安定した状態)」に向かいやすい体の土台づくりです。

毎日の生活が少しでも楽になるように整えること、そして主治医と相談しながら減薬のタイミングを早められる状態をつくることをサポートします。

参考文献

Clinical Efficacy of Acupuncture for the Treatment of Rheumatoid Arthritis(2022年・Li ら メタ解析)

The effects of acupuncture and related techniques on patients with rheumatoid arthritis: a systematic review and meta?analysis(2022年・Lu ら)

Comparison of Efficacy of Acupuncture?Related Therapy in the Treatment of Rheumatoid Arthritis: A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials(2022年・Wan ら ネットメタ解析)

Q. サプリについて鍼灸師に相談できますか?

相談は可能です。当院ではサプリメントを「病気を治すもの」ではなく、「内臓の疲れや体質に応じて栄養を補う補助的なもの」として考えています。

そのため、患者さんの体質(肝臓・小腸の弱りなど)に合わせて、どの栄養が不足していそうかといった視点でアドバイスを行います。

一方で、薬との相互作用の評価や、リウマチそのものを改善すると謳う商品の医学的判断は鍼灸師の範囲外となるため、必ず主治医と相談していただく必要があります。主治医に聞きにくい場合は上手な質問の仕方をお伝えします。

Q. 病院の治療と鍼灸は併用できますか?

もちろん併用できます。当院に通われているリウマチ患者さんのほとんどが、薬物療法と鍼灸を併用しています。

鍼灸は体質を整え、内臓の疲れや免疫バランスを改善するサポートを行うため、薬の効果を邪魔するどころか、選択肢を広げる補助的なケアとして役立ちます。

実際に、リウマチ治療において鍼灸の併用が痛みの軽減やADL(日常生活動作)の改善につながるという報告も国内外で発表されています。

医療と鍼灸は対立するものではなく、患者さんの体調をより良くするための“チーム医療の一部”として併用するものです。

まとめ

関節リウマチと向き合う日々は、痛みや関節の腫れ変形など不安が重なりやすく、心身ともに負担を感じることが少なくありません。毎朝こわばりがあって、少しずつひどくなっている感じがすれば、サプリメントや自分でできることを探したくなるお気持ちは、多くの患者さんが抱えている自然なこと。

ただし、免疫を直接コントロールできるのは薬だけであり、サプリメントはあくまで体を支える補助的な存在です。だからこそ、鍼灸では「内臓の働きを整え、体質を安定させる、免疫を暴走させない」という視点から、毎日の生活を少しでも楽にするためのサポートを行っています。

鍼灸は医療と反対側にあるものではなく、主治医の治療を支えるパートナーのような存在です。薬物療法と併用することで、痛み・こわばり・疲れやすさといった日常の悩みが軽くなり、体調が安定しやすくなるケースは多く見られます。

リウマチは長く付き合う病気ですが、身体の土台が整ってくると、生活の質が上がり、将来に対しても明るい見通しを持ちやすくなります。

焦らず、しかし確実に。

適切な治療と、鍼灸による体質のケアを組み合わせることで、より良い毎日へと進んでいくことができます。

当院の関節リウマチの解説はこちら

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