投稿日:2026年10月15日
生活音がつらい聴覚過敏とは?耳鳴りとの関係と、耳栓に頼りすぎない対処法
カテゴリ: 耳鳴り・難聴

「食器がぶつかる音が頭に響く」「テレビの音や家族の話し声が、ときどき耐えられない」「耳鳴りもあるのに、周りには気のせいだと言われてしまう」——そんなお悩みを抱えて、ご相談に来られる方がいらっしゃいます。
多くの人が気にならない生活音を、つらく感じてしまう状態は聴覚過敏と呼ばれます。目に見えない症状であるうえ、原因もはっきりしないことが多く、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。そして、つらさから耳栓やノイズキャンセリングに頼る日が続いている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、大人の聴覚過敏について、耳鳴りとの関係、考えられる原因、受診の目安、そして「耳栓に頼りすぎない」ための考え方を整理していきます。なお、発達障害に伴う子どもの聴覚過敏は背景が異なることが多いため、今回は扱いません。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
聴覚過敏とは?音が大きく聞こえる・痛いと感じる状態
聴覚過敏の主なタイプ
聴覚過敏とは、ほとんどの人が普通と感じる音に対して、耐性が低下した状態を指します。発症する前は何でもなかった音が、不快に、ときには痛みとして感じられるようになるのが特徴です。車のエンジン音、水の流れる音、冷蔵庫の作動音といった、日常の何気ない音がきっかけになることもあります。
大きく分けると、次のようなタイプがあるとされています。
・ラウドネス型|日常の音が耐えられないほど大きく聞こえる
・痛み型|音によって耳に痛みが生じる(すぐに出る場合も、遅れて出る場合もある)
この2つを併せ持つ方も多いといわれています。
ミソフォニア・音恐怖症との違い
似た言葉に、ミソフォニア(音嫌悪)や音恐怖症があります。ミソフォニアは、咀嚼音や鼻をすする音といった特定の音に対して、強い怒りや不快感が湧く状態です。音恐怖症は、音そのものへの恐れが中心にあります。これらは聴覚の問題というより、感情に関わる脳のしくみが関与するものとして、聴覚過敏とは区別して考えられています。
ただし、実際には線引きが難しく、聴覚過敏のつらい経験が音への恐れや嫌悪につながることも指摘されています。ご自身がどのタイプに近いのかは、耳鼻咽喉科で相談してみるのが確実です。
耳鳴りとは別の状態だが、併発しやすい
聴覚過敏は、耳鳴りの一種ではありません。ただ、両者は一緒に起こりやすく、発現のしくみが似ていると考えられています。そのため、治療の方針も一部の例外を除いて共通する部分が多いとされています。
聴覚過敏が起こる原因と、関連する状態
騒音への曝露・音響外傷
後天的な原因として最も多いのは、大きな音への曝露です。長年にわたる職場の騒音やライブ会場などでの大音量のほか、花火や銃声のような突発的な大音量で発症することもあります。
ストレス・不安・心身の緊張
聴覚過敏は、不安やうつ、PTSDなどとの関連が指摘されています。心身の緊張が強い時期に音への感じやすさが増すという方は少なくありません。つまり、耳の問題だけでなく、心の状態や体のコンディションも含めて見ていくことが大切になります。
ほかの病気や状態との関連
次のような病気や状態との関連も報告されています。
・片頭痛
・顎関節症
・顔面神経麻痺(ベル麻痺)
・メニエール病
・中耳炎
・手術後や薬剤の影響
顎関節症や片頭痛のように、首・顎・頭まわりの状態と関わりのあるものが含まれている点は、のちほど触れるケアの視点にもつながります。
原因がはっきりしないことも多い
一方で、きっかけが特定できないケースも多いのが実情です。聴覚過敏が起こる生物学的な仕組みは、現時点ではまだ十分に解明されていません。「原因が分からない」と言われても、決して珍しいことではないのです。
耳鳴りと聴覚過敏の関係
耳鳴りと聴覚過敏が一緒に現れる方は多く、日常の音の変化に合わせて耳鳴りが強まったり変わったりする「反応性耳鳴り」も知られています。また、耳の詰まり感、鼓膜がぴくぴくする感じ、音がゆがんで聞こえる、エコーがかかったように感じる、といった症状を併せて訴える方もいます。
専門家の間では、どちらも、音の大きさを感じ取る脳の働きに変化が起きていることが関わるとされています。つまり、耳鳴りと聴覚過敏は「別々の病気」というより、近いしくみを持つ症状として捉えられているのです。このため、耳鳴りで受診した際に、聴覚過敏もあわせて伝えておくと診療がスムーズになります。
聴覚過敏は何科へ?診断と検査の流れ
まずは耳鼻咽喉科へ
まず受診したいのは耳鼻咽喉科です。診断は問診が中心で、聴力検査のほか、音を不快に感じ始める音量(不快閾値)を測る検査を行うことがあります。聴覚過敏の人は、この閾値が低い傾向にあるとされています。ただし、聴覚過敏に特化した検査は確立されておらず、症状の程度を質問票で評価するのが一般的です。
こうした検査には、耳の病気や、ほかの基礎疾患が隠れていないかを確認する意味もあります。「気のせいかも」と我慢せず、一度きちんと調べておくと安心につながります。
受診前にメモしておくとよいこと
聴覚過敏は、症状を言葉にして伝えるのが難しいと感じる方が多い症状です。受診の前に、次のような点をメモしておくと、診察の助けになります。
・つらく感じる音の種類(食器、話し声、掃除機など)
・始まった時期と、きっかけに思い当たること(大きな音を聞いた、体調を崩した、など)
・耳鳴り、耳の詰まり感、頭痛、めまいなどの併発症状
・症状が強くなる時間帯や状況(疲れた日、緊張した日など)
・今使っている耳栓やヘッドホンの頻度
精神面の症状が強いときは、心療内科・精神科にも
聴覚過敏には、不安や気分の落ち込みなど、精神面の症状が伴うことがあります。耳鼻咽喉科の資料でも、精神医学に準じた診療が望ましいとされており、精神疾患が背景にある場合は、その支援を受けることが勧められています。つらさが強いときは、耳鼻咽喉科と並行して、心療内科や精神科に相談する選択肢もあります。
耳鼻科・専門機関での治療|サウンドセラピー・TRT・認知行動療法
専門機関では、次のような方法が用いられます。
・サウンドセラピー|音に段階的に慣らしていき、少しずつ耐性を高める
・認知行動療法|音に伴う不安や恐怖への向き合い方を整える
・耳鳴り再訓練療法(TRT)|病態の説明やカウンセリングと、音を使った療法を組み合わせる
共通しているのは、音を「避けて」いくのではなく、「慣れて」いく方向で取り組む点です。また、完全に症状をなくすことを目標にするのではなく、日常生活と無理なく共存できる状態を目指すという考え方が示されています。時間のかかるアプローチですが、焦らず段階的に進めていくことが大切です。
耳栓・ノイズキャンセリングは使っていい?

つらい音を遮りたい気持ちは、とてもよく分かります。ただ、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンを日常的に使い続けることは、一般的には推奨されていません。
理由は、音を遮りすぎることで、脳が音の大きさを調整する感度がさらに高まり、かえって音に敏感になってしまうおそれがあるためです。静かな環境に慣れすぎると、普通の音がますます大きく感じられる、という悪循環に入りやすくなるとされています。
とはいえ、強い騒音の場所での使用など、必要な場面もあります。「使ってはいけない」と決めつけるのではなく、いつ、どの程度使うかを、耳鼻咽喉科や聴覚の専門家と相談して決めることが重要です。自己判断で常用を続けず、まず専門家の意見を聞いてみてください。
聴覚過敏のつらさを和らげるセルフケア
音環境の整え方
国内の耳鼻咽喉科の資料では、豊かな音環境に触れることで、音の大きさを感じる機能の回復を図る考え方が示されています。静寂を求めすぎず、やわらかい環境音を日常に取り入れるなど、無理のない範囲で音との距離を保つことが勧められる場合があります。ただし、進め方は症状によって異なるため、専門家の指導のもとで取り入れてください。
睡眠・休息・ストレスのケア
睡眠不足や疲労、慢性的なストレスは、心身の緊張を高め、症状をつらく感じさせる一因になりえます。就寝前のスマートフォンを控える、入浴で体を温めるなど、生活のリズムを整えることから始めてみましょう。
首肩・顎まわりを温めてゆるめる
聴覚過敏のある方には、首や肩のこり、顎の緊張を併せ持つ方が少なくありません。蒸しタオルや入浴で首肩を温める、食いしばりに気づいたら力を抜く、といった習慣は、体の緊張をやわらげる助けになります。強いストレッチや自己流のマッサージは、かえって負担になることがあるため、気持ちよい範囲にとどめてください。
聴覚過敏に対する鍼灸の考え方
鍼灸の有効性は、まだ研究では示されていない
最初にお伝えしておきたいのは、聴覚過敏そのものに対して、鍼灸が有効だと示した信頼できる研究は、現時点で見つかっていないということです。隣接する耳鳴りについても、鍼の臨床試験を集めたレビューでは、研究の質に限りがあり、有効性について確定的な結論は出せないとされています。
一方で、当院では、耳鼻咽喉科での治療と鍼灸を併用された方のなかに、症状が軽減した事例があります。研究で示された効果ではなく、あくまで当院での経験にもとづくものです。効果の感じ方には個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありませんのでご注意下さい。
標準的な治療の中心は、耳鼻咽喉科や専門機関での診断と、サウンドセラピーなどの取り組みです。鍼灸は、それらと並行して取り入れていただくものと考えています。
耳まわりの筋肉や、鼻・のどの状態にも目を向ける
当院では、聴覚が過敏になっているときに、耳まわりの筋肉の緊張や、鼻・のどに生じた小さな炎症が関わっている場合があると考えています。たとえば、顎関節症や顔面神経麻痺は聴覚過敏との関連が指摘されていますし、鼻やのどの炎症が耳管を通じて耳の状態に影響することも知られています。
そこで当院では、首肩や顎、耳まわりの筋肉の緊張に加えて、鼻やのどまわりの状態にも目を向けながら、施術を組み立てています。具体的には、聴覚過敏のある方が併せて抱えやすい、次のような困りごとに着目します。
・首や肩のこり
・顎まわりの緊張
・眠りの浅さ、疲れの抜けにくさ
・緊張が抜けず、リラックスしにくい状態
鍼灸は、筋肉の緊張をゆるめ、血流を促し、副交感神経が働きやすい状態へ導くことを目的に行います。服薬やサウンドセラピーとは異なる角度から体にアプローチできる点が、鍼灸ならではの特徴です。体全体のコンディションを整えることで、日々の過ごしやすさや症状の軽減につながった事例を、当院では経験しています。
耳鼻科の治療と並行して受けるという考え方
鍼灸は、耳鼻咽喉科の診断や治療に代わるものではありません。当院では、診断を受けたうえで、病院での治療と併用していただくことをおすすめしています。効果の感じ方には個人差があり、合わないこともありますので、気になる点があれば遠慮なくお伝えください。
よくある質問
Q. 聴覚過敏は自然に治りますか?
きっかけとなった状況が落ち着くと軽くなる方もいれば、長く続く方もいます。個人差が大きいため、続くようであれば早めに耳鼻咽喉科で相談してください。
Q. 耳栓は使わないほうがいいですか?
常用は一般的に推奨されていませんが、騒音の強い場所では必要な場面もあります。使う場面や頻度は、専門家と相談して決めるのが安心です。
Q. 鍼灸を受けても大丈夫ですか?
耳鼻咽喉科での診断を受けたうえで、治療と併用して受けていただくことをおすすめしています。鍼灸の有効性は研究では報告されていませんが、当院では、併用によって症状が軽減した事例があります。ただし個人差がありますので、改善をお約束するものではないことをご理解のうえ、ご相談ください。
Q. 子どもの聴覚過敏も同じ考え方でいいですか?
お子さんの聴覚過敏は、発達の特性など別の背景が関わっていることがあります。ご心配な場合は、小児科や耳鼻咽喉科、発達に関する専門機関に相談してください。
まとめ
聴覚過敏は、多くの人が気にならない生活音が、つらく感じられる状態です。耳鳴りと併発しやすく、騒音への曝露やストレス、顎関節症や片頭痛など、さまざまな状態との関連が指摘されています。まずは耳鼻咽喉科で調べ、サウンドセラピーやTRTといった専門的な取り組みを土台にすることが大切です。
耳栓やノイズキャンセリングは、頼りすぎるとかえって悪化するおそれがあるため、使い方を専門家と相談しながら決めていきましょう。そして、つらさが強いときは、一人で抱え込まず、耳鼻咽喉科や心療内科にもご相談ください。
ミントはり灸院(神戸・明石)では、耳まわりや首肩・顎の筋肉の緊張、鼻やのどまわりの状態、睡眠の質などに目を向けながら、聴覚過敏のある方に寄り添う鍼灸ケアを行っています。耳鼻咽喉科での治療との併用を歓迎しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。























