投稿日:2026年7月23日
機能性ディスペプシアは薬と鍼灸の併用が効果的|アプローチの違いを解説
カテゴリ: 胃腸障害

FDで鍼灸とお薬との併用
「アコファイドを飲んでいるけど、胃もたれが完全には治らない」「六君子湯を試したけど効果を感じにくい」——機能性ディスペプシア(FD)の治療を続ける中で、こうしたお悩みを抱える方は少なくありません。
今回は、以前の記事でご紹介した機能性ディスペプシアの基本的な内容とは視点を変えて、薬物療法(投薬)と鍼灸治療のアプローチの違い、そして両者を併用することのメリットについて詳しく解説します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
機能性ディスペプシアの薬物療法|何を目的とした薬なのか
機能性ディスペプシアの治療ガイドラインでは、一次治療薬・二次治療薬という形で、エビデンスレベルに応じた段階的な薬剤選択が明記されています。まずは、実際にどのような薬が使われているのかを整理してみましょう。
酸分泌抑制薬(PPI・P-CAB)
胃酸の分泌を強力に抑える薬です。心窩部痛症候群(EPS)のような、みぞおちの痛みや灼熱感が中心のタイプに用いられることが多く、代表的な薬にはネキシウムやタケキャブなどがあります。
消化管運動機能改善薬(アコチアミドなど)
アコファイド(アコチアミド)は、機能性ディスペプシアに対して世界で初めて保険適応となった薬で、胃の適応性弛緩(食べ物が入ってきたときに胃が広がる機能)や胃の排出機能を改善する働きがあります。食後愁滞症候群(PDS)、つまり胃もたれや早期満腹感が中心のタイプに主に用いられます。
漢方薬(六君子湯)
六君子湯は、ガイドラインにおいて推奨度が高く評価されている漢方薬で、食欲に関わるホルモンであるグレリンの分泌を介して、胃の蠕動運動や排出機能の改善に働きかけるとされています。一方で、消化管の知覚過敏や胃酸そのものへの効果は限定的とされ、症状のタイプによって効果に差が出やすいという特徴があります。
実際の臨床では、単独の薬剤だけで症状が完全に解決するケースは少なく、酸分泌抑制薬・消化管運動機能改善薬・漢方薬を組み合わせて処方されることが一般的です。
薬物療法と鍼灸治療|アプローチの根本的な違い

ここまで見てきたように、薬物療法は「胃酸を抑える」「胃の運動を促す」「特定の受容体に作用する」といった、個別の症状や機能に対してピンポイントで働きかけるアプローチです。原因を一つに絞り込み、そこに薬理作用で介入するのが基本的な考え方といえます。
鍼灸は「体全体のバランス」から症状にアプローチする
一方、鍼灸治療は自律神経系を介して、胃の運動機能・知覚過敏・ストレス反応など、複数の要因に同時にアプローチするという特徴があります。機能性ディスペプシアの背景には、胃の適応性弛緩障害、胃排出能異常、内臓知覚過敏、ストレスによる自律神経の乱れなど、複数の要因が絡み合っていることが多く、単一の薬剤だけでは対応しきれない部分に、鍼灸が補完的に働きかけられる可能性があります。
薬は「症状別」、鍼灸は「体質別」というイメージ
わかりやすく言えば、薬物療法は症状のタイプ(PDSかEPSか)に応じてピンポイントで選択されるのに対し、鍼灸治療はその方の体質や自律神経の状態全体を見ながら施術内容を調整するという違いがあります。どちらが優れているというものではなく、得意とするアプローチの方向性が異なると理解しておくとよいでしょう。
薬と鍼灸を併用することのメリット
実際の臨床報告でも、酸分泌抑制薬とアコチアミド、あるいは漢方薬を組み合わせることで症状が改善するケースが大半とされており、機能性ディスペプシアの治療は「単独ではなく組み合わせ」が基本的な考え方になりつつあります。この考え方は、鍼灸との併用にも応用できます。
薬でカバーしきれない部分を鍼灸が補う
たとえば、アコチアミドで胃の運動機能は改善したが、ストレスによる知覚過敏や自律神経の乱れが残っているというケースでは、鍼灸によって薬だけでは届きにくい部分にアプローチできる可能性があります。逆に、鍼灸で自律神経は整ってきたが、胃酸の分泌が明らかに多いという場合は、酸分泌抑制薬の力を借りることで、より効率的な改善が期待できます。
薬の減量・卒業を目指しやすくなる
長期的に薬を服用し続けることに不安を感じる方も少なくありません。鍼灸で自律神経のバランスや体質そのものを整えていくことで、将来的な薬の減量や卒業を視野に入れやすくなるという点も、併用の大きなメリットです。もちろん、薬の減量や中止は自己判断せず、必ず主治医と相談しながら進めることが大切です。
再発しにくい体質づくりにつながる
薬物療法は症状が出ている「今」への対処に優れていますが、体質そのものを変えるものではないため、服薬を中止すると症状が再燃しやすいという課題があります。鍼灸を並行して取り入れることで、症状が出にくい体質へと少しずつ変化させていくことが期待でき、薬だけに頼らない長期的な体調管理につながります。
こんな方に併用をおすすめします
・アコファイドや六君子湯を服用しているが、効果を実感しにくい方
・複数の薬を併用しているが、症状が完全には消えない方
・薬を長期間飲み続けることに不安がある方
・ストレスや緊張を感じると症状が悪化しやすい方
・薬をやめるとすぐに胃もたれや胃痛が再発する方
・胃の症状に加えて、冷えや肩こり、不眠なども気になる方
併用する際に気をつけたいこと
薬物療法と鍼灸治療を併用する際は、いくつか注意しておきたい点があります。
自己判断で薬を中止しない
鍼灸で調子が良くなったと感じても、自己判断で薬を中止するのは避けましょう。減薬や中止のタイミングは、必ず処方医と相談したうえで進めることが安全です。
器質的疾患の除外がまず優先
機能性ディスペプシアの診断には、潰瘍やがんなどの器質的疾患を除外するための内視鏡検査が前提となります。まだ検査を受けていない場合は、消化器内科での受診を優先したうえで鍼灸を検討してください。
症状の変化を記録しておく
薬と鍼灸を併用する場合、どちらの影響でどのように症状が変化したかが分かりにくくなることがあります。簡単な記録をつけておくと、主治医や鍼灸師との情報共有もスムーズになります。
薬と鍼灸の併用イメージ|こんな流れで進むことが多い
実際の併用の進み方は患者さんによって異なりますが、一般的な流れのイメージをご紹介します。
ステップ1:まずは病院での診断・薬物療法から
胃カメラなどの検査で器質的疾患を除外したうえで、酸分泌抑制薬やアコチアミド、六君子湯などによる薬物療法が開始されるのが一般的な流れです。多くの方はこの段階で一定の改善を実感します。
ステップ2:薬だけでは残る症状に鍼灸を並行
薬を数週間〜数ヶ月続けても症状が完全には消えない、あるいは症状の波が大きいという場合に、鍼灸治療を並行して取り入れるケースが多く見られます。この段階では、薬はそのまま継続しながら、鍼灸で自律神経や体質面へのアプローチを追加していきます。
ステップ3:体調の変化を見ながら、主治医と相談し調整
鍼灸を継続する中で体調に変化が見られた場合は、その内容を主治医に伝え、薬の量や種類を見直すかどうかを相談していきます。あくまで主体は病院での治療方針であり、鍼灸はそれを補完する立ち位置として関わっていくのが望ましい形です。
このように、薬と鍼灸は「対立するもの」ではなく「役割分担するもの」として捉えることで、より納得感のある治療の進め方ができるようになります。
よくある質問
Q. 鍼灸を始めたら、薬をすぐにやめても良いですか?
いいえ、自己判断での中止はおすすめできません。鍼灸によって体調が上向いてきたと感じても、薬の減量・中止は必ず処方医の判断のもとで進めてください。鍼灸院としても、無理な減薬を勧めることはありません。
Q. どのタイミングで鍼灸を取り入れるのが良いですか?
特に決まったタイミングはありませんが、「薬を飲んでいるのに症状が残っている」「薬をやめると再発する」と感じた時点が、鍼灸を検討する一つの目安になります。診断直後から並行して取り入れることも可能です。
Q. PDSとEPS、どちらのタイプでも鍼灸は効果がありますか?
鍼灸は自律神経全体に働きかけるアプローチのため、タイプを問わず適応できるとされています。ただし、症状の出方によって刺激するツボや施術内容は調整します。ご自身がどちらのタイプに近いか分からない場合も、問診の中で一緒に整理していきます。
Q. 漢方薬(六君子湯など)と鍼灸を同時に行っても問題ないですか?
問題ありません。漢方薬と鍼灸はどちらも東洋医学の考え方をベースにしており、相性が良い組み合わせとされています。実際、漢方治療と鍼灸を併用することで、体質改善の効果を高めようとする考え方は臨床でも広く行われています。
薬物療法と鍼灸、それぞれが向いているケース
どちらの治療法にも得意・不得意があります。ご自身の状態に照らし合わせて参考にしてください。
薬物療法が向いているケース
・症状が急性で、できるだけ早く症状を抑えたい方
・胃酸の分泌過多が明確な原因と考えられる方
・診断直後で、まずは標準治療から始めたい方
鍼灸治療が向いているケース
・薬を長期間続けているが、症状の波が大きい方
・ストレスや自律神経の乱れが明らかに関係している方
・薬に頼らない体質改善を並行して進めたい方
・冷えや肩こり、不眠など、胃以外の不調も併せ持っている方
実際には、この2つを対立させて「どちらか一方を選ぶ」のではなく、症状のフェーズに応じて比重を変えながら併用していくことが、多くの患者さんにとって現実的な選択肢となります。
まとめ|機能性ディスペプシアは薬と鍼灸を組み合わせて考える時代へ
機能性ディスペプシアの治療ガイドラインでも、単独の薬剤だけでなく、複数のアプローチを組み合わせることが実臨床に即しているという考え方が広がっています。薬物療法が「今の症状」にピンポイントで働きかけるのに対し、鍼灸は「体質そのもの」に働きかけるという異なる強みを持っています。
神戸市・明石市で機能性ディスペプシアの治療において、薬と鍼灸の併用をご検討中の方は、ぜひ一度ミントはり灸院にご相談ください。現在の服薬状況もお伺いしながら、無理のない併用プランをご提案します。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。
























