投稿日:2026年7月15日
検査で異常なしなのに続く胃の不調|機能性ディスペプシアに鍼灸が効く理由
カテゴリ: 胃腸障害

「胃カメラを受けても異常なしと言われたのに、胃もたれや胃の痛みが続いている」——そんな症状でお悩みではありませんか?検査で器質的な異常が見つからないにもかかわらず、慢性的な胃の不快感が続く状態は機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)と呼ばれています。
本記事では、機能性ディスペプシアに対する鍼灸治療の効果と、その根拠となる研究・論文についてご紹介します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
機能性ディスペプシアとは|検査で「異常なし」なのに続く胃の不調
機能性ディスペプシアは、上部消化管内視鏡検査などを行っても、潰瘍やがんといった組織的な病変が見当たらないにもかかわらず、胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛み・灼熱感といった上腹部症状が慢性的に続く疾患です。ディスペプシアとは「消化不良」を意味する言葉で、命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を大きく低下させることが知られています。
国際的な診断基準であるRome IV分類では、主に以下の2つのタイプに分けられます。
・食後愁滞症候群(PDS):食後の胃もたれ、早期満腹感が中心のタイプ
・心窩部痛症候群(EPS):みぞおちの痛みや灼熱感が中心のタイプ
世界的な有病率は約10〜20%とも報告されており、決して珍しい症状ではありません。日本でも「胃弱」「ストレス性胃炎」として片づけられがちですが、実際には明確な疾患概念として認識されています。
薬物療法だけでは改善しにくい理由
機能性ディスペプシアの治療では、プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)、消化管運動改善薬、場合によっては抗うつ薬などが処方されます。しかし、これらの薬物療法の効果はプラセボ(偽薬)との差が小さいことが複数の研究で指摘されており、十分な改善が得られない患者さんも少なくありません。
機能性ディスペプシアの発症には、胃の蠕動運動の異常、内臓知覚過敏、ストレスによる自律神経の乱れ、脳と腸の相互作用(脳腸相関)の乱れなど、複数の要因が複雑に関わっていると考えられています。薬だけで胃酸の分泌をコントロールしても、こうした背景にある要因まで解消されるわけではないため、症状が残ってしまうケースが多いのです。
機能性ディスペプシアに鍼灸が効果的な理由
鍼灸治療は自律神経のバランスを整えることに優れており、機能性ディスペプシアのように背景にストレスや自律神経の乱れが関わる症状に、古くから用いられてきました。
自律神経を整え、胃の運動機能を高める
胃の運動や胃酸の分泌は、自律神経によってコントロールされています。機能性ディスペプシアの方は交感神経が優位になりやすい傾向があり、緊張やストレスを感じやすい状態が続いていることが少なくありません。鍼灸によって副交感神経を優位に導くことで、胃の蠕動運動が促され、消化機能そのものの改善が期待できます。
内臓知覚過敏をやわらげる

機能性ディスペプシアでは、本来なら気にならないはずの胃の動きや軽い刺激を、痛みや不快感として過敏に感じてしまう「内臓知覚過敏」が関わっているケースがあります。鍼灸刺激によって神経系の過敏な反応が緩和されることで、症状の軽減につながると考えられています。
ストレスや不安の緩和にもつながる
機能性ディスペプシアは脳腸相関、つまり脳のストレス反応と胃腸の状態が密接に影響し合う疾患です。鍼灸にはリラックス効果があり、心配事や不安を軽減することが、間接的に胃の症状の改善につながるとも言われています。
脳と腸は自律神経や複数のホルモンを介して常に情報をやり取りしており、強いストレスを感じると胃の運動が乱れ、逆に胃の不調が続くことで不安が増すという悪循環が生まれやすいことが知られています。この双方向の関係性は「脳腸相関」と呼ばれ、近年では機能性ディスペプシアだけでなく、過敏性腸症候群など多くの消化器疾患の発症メカニズムとして注目されています。鍼灸によって自律神経を整えることは、この悪循環を断ち切る一つのアプローチになり得ると考えられています。
機能性ディスペプシアと鍼灸に関する研究・論文
機能性ディスペプシアに対する鍼治療の有効性については、近年、質の高い研究報告が増えてきています。
2025年に発表された最新のメタアナリシス(23件のランダム化比較試験・参加者2,454名を統合した分析)では、偽鍼(シャム鍼)と比較して、本物の鍼治療によって消化器症状スコアと生活の質(QOL)スコアの双方に有意な改善が確認されています。この結果は、GRADEシステムという評価法において「中〜高い確実性」のエビデンスとして位置づけられており、副作用の増加も認められなかったと報告されています。
また、国内の鍼灸学会が2006年から2022年までの海外論文26編を対象に行った文献レビューでは、そのうち25編で鍼治療の有効性が示されていたとされています。特に食後愁滞症候群(PDS)を対象とした研究が近年増加しており、足三里・内関・中脘・公孫といったツボが頻繁に使用されていることも報告されています。海外では鍼治療と薬物療法を併用することの有効性も示されており、単独治療よりも併用療法の方が実臨床に即していると考察されています。
一方で、初期の研究にはサンプルサイズの小ささや研究の質にばらつきがあるという課題も指摘されており、今後さらに大規模で質の高い研究の蓄積が期待される分野でもあります。
こんな症状に心当たりのある方へ
以下のような状態に当てはまる方は、鍼灸治療が特に効果を発揮しやすい傾向があります。
・胃カメラで異常なしと言われたが、胃もたれや胃痛が続いている
・食後にすぐお腹がいっぱいになる、少量しか食べられない
・みぞおちのあたりが痛む、焼けるような感覚がある
・ストレスを感じると胃の調子が悪くなる
・薬を飲んでも効果を実感しにくい
・胃の不調に加えて、不安感や気分の落ち込みもある
機能性ディスペプシアが起こりやすい方の傾向
機能性ディスペプシアは、特定の生活習慣や体質を持つ方に発症しやすいことが指摘されています。
・仕事や人間関係でストレスを感じやすい方
・真面目で几帳面、無理をしてしまいやすい性格の方
・不規則な食事時間、早食いの習慣がある方
・慢性的な睡眠不足がある方
・過去に胃腸炎やピロリ菌感染の既往がある方
・冷え性や自律神経の乱れを自覚している方
こうした傾向を持つ方は、胃そのものだけでなく、日々の生活リズムや心身の緊張状態にも目を向けることが改善への近道となります。鍼灸治療とあわせて、生活習慣の振り返りを行うことで、再発しにくい体づくりを目指すことができます。
機能性ディスペプシアと似た症状との違い
胃の不調というと、逆流性食道炎や過敏性腸症候群(IBS)と混同されることもあります。
逆流性食道炎は胃酸が食道へ逆流することで胸やけや呑酸が生じる疾患である一方、機能性ディスペプシアは胃の運動機能や知覚の異常によって、みぞおち周辺の症状が中心となる点が異なります。また過敏性腸症候群は主に腸の症状(腹痛・便通異常)が中心となる疾患であり、機能性ディスペプシアとは症状の現れる部位が異なります。
ただし、これらの疾患は合併することも多く、自律神経の乱れという共通の背景を持つとも考えられています。ご自身の症状がどのタイプに近いか分からない場合も、まずはお気軽にご相談ください。
鍼灸院での施術の考え方

機能性ディスペプシアに対する鍼灸治療では、胃そのものだけでなく、全身のバランスを見ながら施術を行うことが重要です。
お腹だけでなく全身から原因を探る
丁寧な触診を行うと、ご本人が自覚していない首・肩・背中の緊張が、胃の不調と関連しているケースが少なくありません。慢性的なストレスや同じ姿勢を続ける生活習慣によって、自律神経の伝達経路である背骨まわりに負担がかかっていることもあります。こうした部位への施術が、間接的に胃の機能改善につながることがあります。
体質や症状のタイプに合わせたツボの選定
先述のとおり、機能性ディスペプシアには食後愁滞症候群(PDS)と心窩部痛症候群(EPS)という2つのタイプがあり、タイプによって現れやすい症状や体の反応が異なります。足三里・内関・中脘・公孫といった代表的なツボを軸にしながら、患者さん一人ひとりの体質や症状の出方に合わせて施術内容を調整していきます。
継続的なケアで体質改善を目指す
機能性ディスペプシアは慢性的に症状が続く疾患であるため、1回の施術だけで劇的に改善するというよりも、継続的な施術を通じて自律神経のバランスを整えていくアプローチが基本となります。あわせて、ご自宅でできるセルフケアや生活習慣についてのアドバイスも行っています。
よくある質問
Q. 病院の薬と鍼灸を併用しても大丈夫ですか?
問題ありません。海外の研究でも、薬物療法と鍼治療を併用することの有効性が報告されています。現在服用中の薬がある場合は、施術前のカウンセリングで教えてください。
Q. 胃カメラを受けていませんが、相談できますか?
機能性ディスペプシアの診断には、潰瘍やがんなどの器質的疾患を除外するための内視鏡検査が重要です。まだ検査を受けていない場合は、まず消化器内科での受診をおすすめしたうえで、鍼灸との併用をご検討いただくのが望ましい流れです。
Q. どのくらいの期間で効果を感じられますか?
症状の程度や経過期間によって個人差がありますが、紹介した研究でも複数回の施術を重ねることで症状スコアの改善が確認されています。初回のカウンセリングで、今後の施術ペースについても丁寧にご説明します。
まとめ|機能性ディスペプシアの鍼灸治療はミントはり灸院へ
機能性ディスペプシアは「検査で異常がないから気のせい」ではなく、自律神経や内臓知覚過敏など、明確な背景を持つ疾患です。薬物療法だけで改善しきれない場合、鍼灸による自律神経へのアプローチが、症状緩和の選択肢のひとつとなり得ます。
機能性ディスペプシアや胃の不調に対する鍼灸治療をお探しの方は、ぜひ一度ミントはり灸院にご相談ください。丁寧な触診と問診で、あなたの症状の原因を一緒に探っていきます。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。






























