2025年5月16日
首への鍼治療は危険?首の鍼治療に潜むリスクについて詳しく解説
カテゴリ: Q&A(よくある質問)
首の内部には体にとって大事な物が沢山詰まっています。
首は胴体に比べて体積も小さいのでどこを触れても血管や神経の近くにあるので、首=過敏なところというイメージがありますよね。
首の骨を鳴らしたら危ない!
首のマッサージは危険だ!
2024年のニュースにタイで発生した首をねじるマッサージによって当時人気の歌手が亡くなってしまったという報道がありました。
鍼灸の場合はどうなのか?解説していきます。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
首の鍼治療は危険なのか
首の鍼灸治療の危険性はほとんどありません。体に鍼をするかぎりある程度のリスクはどの場所でも存在します。内出血であったり、治療後の違和感が残ったりなど。
首特有の問題というのは考えにくくなります。
首をひねるマッサージで事故が発生したのは、ひねる動きの中で首の血管が剥離してその後に血管が破れたしまったということです。
じゃあ、鍼も血管に刺されば大変なことになるんじゃないの?と思いますよね。
鍼灸治療で使われる針は非常に細くできています。
髪の毛よりも細いぐらいです。なので針そのものもフニャフニャです。
血管とくに動脈の表面は非常に固くなっていて鍼灸の針では刺さらないわけです。
注射の針であっても、採血用の針は非常に太くなっていて、先端が刀のようになっているから血管を貫くことができます。
これは神経も同じです。神経線維は血管よりは細いですが、柔らかい線のようになっています。
神経の周りも柔らかい組織で覆われている中で柔らかい針が刺さることはほぼ不可能です。
以上のことから首への鍼治療はマッサージのように血管や神経をひねって傷つけるということはできないので安全であると言えます。
そもそも国家資格者かどうか
施術をする限り何かしらの副作用というのは避けることはできません。
どんな治療や薬であってもリスクはあるわけです。
その確率をできる限り下げることが医療者としての実力です。
その実力を担保しているのが国家資格を持っているかどうかです。
前述のマッサージの例でも、施術をしたのは無資格者でした。
日本においても無資格者における施術の医療事故件数は有資格者に比べても多くなっています。
当たり前のことですが、長時間の教育や必死に勉強して国家試験を合格した医療者が行う施術は安全性が担保されていると言えます。
首の鍼治療で起こり得るリスク
首の治療にはまったくリスクがないのか?というとそういうわけではありません。
下記のことを頭にいれて鍼灸師は施術をしています。
1つ目が気胸です。
肺に針をしてしまうと起きてしまうの気胸です。まれに自然気胸といって外的な要因なしに肺に穴が空いてしまう場合もあります。
首にはもちろん肺はありませんので基本的には大丈夫ですが、首から徐々に施術部位が肩に向かっていくことがあります。
そこで鎖骨の高さまで行くと肺のもっとも上部に到達してしまうのでリスクが高まります。
特に首と肩の付け根あたりが凝るという方の場合は施術者は慎重に施術をしています。
2つ目が違和感です。
非常に強いコリが首にある場合に発生しやすくなります。
コリに鍼が当たると独特の感覚が発生します。鍼灸の用語で「響き」という場合もあります。
ただ経験したことのない方にとっては「背中までビリっときた!」や「中で筋肉を握られている感じ」という表現を使う方がいます。
慣れない感覚に恐怖感を覚えてしまうこともあるので、そのインパクトによって感覚が脳に強く残り、施術後も「違和感」を感じることも。これは筋肉の障害というよりは脳への残像感覚です。
こういったことが起きないように、首の施術をする前に他の場所で響きを体験してもらったり、響くと思ったら声かけをするなどすると防ぐことができます。
そもそも鍼を打ってはいけない場所とは?
鍼灸には鍼をしてはいけない場所というのがあります。
目:当たり前ですね。
乳頭:当たり前ですね。
歯(口腔内):越権行為です。
それだけ?って思うかもしれませんが、リスクを考えながら安全な深さや刺激量を守っていけば鍼をすることができます。
むしろ出血性の疾患を持っているとか、状況的に救急に行くべき状態かどうかで鍼灸をするべきかを判断することが重要です。
首の凝りを鍼治療で解消するのは難しいのか?
首や肩のコリを解消するのは、実は奥が深くて難しい場合もあります。
一般的にマッサージや整体など、他の治療院さんで当たり前のように首や肩のこりを解消するメニューを出しているので「どこでも出来る」と考えがちですよね。
関節としてもさまざまな動きができることから首は解剖的にも機能的にもかなりの数の筋肉が関わっています。ということはそれほど大きくない部位の中に凝縮されているわけですから、悪くなっている部位を特定するのも簡単ではありません。
私の勝手な認識かもしれませんが、首こりを簡単だと言っている施術者がいたらそれはまだ経験が少ないのではないのかな?と思っています。
危険な鍼治療を避けるには
長年の鍼灸に対する研究で鍼灸は神経への刺激により体へ反応を起こしていることがわかっています。
ということは無闇やたらに刺激を与える必要はありません。
近年、SNSのバズらせるという観点から、見栄えを意識した鍼灸というのが増えてきました。
鍼の本数が増えたり、鍼が太くなったり、深さがあるほどに、鍼灸の刺激量というのは増えます。
刺激量というのは効果と副作用のバランスによって選ぶべきです。ある程度の刺激量を超えると効果は頭打ちしますが、副作用はどんどんと増えていきます。
なので理想の治療というのは、効果を出すギリギリの刺激量を見極めることです。
いっぱい刺さっているから良いと思うのはリスクを伴うので避けたほうが良いでしょう。
まとめ
鍼灸に限らず、マッサージやカイロプラティックなどでたびたび医療事故のニュースが出ることがあります。そのたびに危険じゃないの?という疑問や不安を持つのは当然のことです。
医療だけではありませんが、他の業界(観光や食品など)でも安全性を軽視したことで事故を起こしたケースがあります。どの場合においても業界全体の安全性に対する意識の低下がきっかけになっていると感じます。
鍼灸の業界では「全日本鍼灸学会」という日本最大の学術団体が率先して、鍼灸の医療事故を防ぐガイドラインの策定をしており、学会に登録している鍼灸師に啓蒙や教育活動を行っています。
当院も加盟しており、鍼灸安全対策ガイドラインというマニュアル本を定期的に見直しています。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。