2025年5月23日
腰痛が鍼治療で治らない?治りにくい原因と改善に向けた対策
カテゴリ: 腰痛・ぎっくり腰
なかなか改善しない腰痛。整体で言われるのは「筋肉が固くなっている」「姿勢が悪いから」「背骨が歪んでいるから」と言われて通ったけど変化がみられず・・。
痛くてつらい・・いよいよ重い腰を上げて鍼灸院に行くかとおもって受診してみると「気の流れ」と言われた。これまでに無かった説明で期待して受けても思ったほど効果はなし・・・
そういえば最近は鍼灸院でも整体メニューがあってそちらを進められている、「あれ?振り出しに戻ってない?」と感じたことはないでしょうか?
結局、私の腰痛は治らないのか?鍼灸では治らなくて、痛みがあるたびにマッサージを受けることしか対処できないのか?と諦めてしまうことはないでしょうか?
鍼灸治療の腰痛に対する効果は数々の研究からも報告されており効果が証明されています。
例えば、米国内科学会の腰痛治療に関するガイドラインでも推奨されていますし、日本国内の慢性腰痛に対するガイドラインについてもまだまだ推奨レベルが低いものの鍼灸が掲載されるようになってきました。
じゃあなぜ?せっかく鍼灸を受けたのにあなたの腰痛がなかなか改善しないのか?その原因と改善に向けた対策方法について解説します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
腰痛が鍼治療で治らないことがある?
腰痛にはさまざまな原因があり、その原因によっては鍼灸では効果がでない場合があります。例えば、がんによる痛みです。これは数年に一度のペースで遭遇することがあり、どれだけ鍼をしても翌日には痛みが出てきます。他にも帯状疱疹や尿管結石などもあり、鍼では太刀打ちできない(その場は痛みが軽減する)病気です。上げれば他にも沢山あります。鍼灸に効果がないということで病気の発見に至ることもあります。
特に腰痛で病院に行く人は少ないですし、整形外科でもたまに見過ごされたりする場合もありますので、隠れている病気を持ったまま鍼灸院に来院することもあります。
また、鍼灸の施術法による効果の違いもあります。鍼灸にはさまざまな流派が存在しており、体の捉え方もそれぞれ違っており腰痛に対する考え方も違います。なので腰痛が改善されるまでに必要な時間が変わってしまうこともあります。
今読んでいるあなたはきっと、大きな病気を持っているわけではないと思いますし、よくわからない流派の違いを理由にされても困ると思いますので、それ以外の治りにくいケースを紹介します。
腰痛が鍼治療で治りにくいケースとは?
これは当院がこれまでに経験した鍼治療で効果が出づらかった事例です。だれでも当てはまる可能性があるので参考になると思います。
その時の対策方法についてその後で解説します。
ケース①:痛みの原因が内臓にある
鍼灸院に来るまでに多くの方はマッサージや整体などを受けていたり、メディアやネットの影響で「姿勢が悪い」「筋肉が硬い」という認識を持っている方が大半です。
もちろん痛みの本体は筋肉の緊張であることは間違いないのですが、筋肉が固くなってしまう原因が何か?というところに認識の違いが出てくると、治療してもなかなか思ったように改善しないということがあります。
人間の体はそもそも左右対称ではありません。内臓の位置も左右差があります。筋肉としても利き腕や利き足があるわけです。
ということは我々は歪みをうまく調整しながら生活しているわけです。歪みがあることで痛みが出るのだとしたら、人類全てが腰痛で悩むことになりますね。
筋肉はとてもしなやかで伸びるようになっているので、多少の歪みでは不調を出ることはありません。ちなみにウサイン・ボルトの背骨は曲がっていると言われています。
筋肉が緊張を起こす理由は筋肉の回復力の低下であって、それは内臓の影響を受けるということです。なので内臓を改善しないといつまでも痛みが続きます。
ケース②:生活習慣が変わらない
さきほど、腰痛の原因は内臓だと書きました。内臓が疲労したり不調になってしまうのは生活習慣の乱れです。我々も突然に風邪(喉の炎症=内臓の不調)を引くわけではありません、ウィルスからの侵入に負けたときに感染してしまうわけです。
この勝ち負けを決めるの免疫力ですね。免疫力が日々上下しているのは生活の中でも感じることがあるかと思います。
夜ふかしや暴飲暴食、仕事のストレスなどで肌荒れがでることもあるかと思います。そのときは免疫力が下がったことで発生しているわけです。
まさに生活習慣の悪化→免疫力の低下→内臓不調という流れになりますので、腰痛を改善している最中でも、生活習慣が改めないと治療以上に負担が増えてしまうことになります。
ケース③:治るの定義
これは少し言い訳っぽく聞こえるかもしれませんが・・・
「治る」とは何か?を施術者と患者さんで認識のズレがある場合です。
患者さんの気持ちに寄り添うと、治る=痛みが完全に消失し、二度と再発しない状態と定義される場合があります。
施術者側からすると、もちろん患者さんの治るを実現したい気持ちはありますが、現実においては「腰痛が起きない状態を管理する」というのが目指すべき方向性になります。
体の構造的な変化というのは完全に回復することはないと言われています。一度でも骨折をすれば、完全にくっついたとしてもその跡は残ります。慢性腰痛により長期間の痛みで筋肉の栄養不足状態が続くと筋肉が萎縮しますが、萎縮を戻すのは長期間のトレーニング等が必要になります。
転んで怪我をした傷跡にしても同じ状態に戻ることはないですよね。
治る=もとに戻るというのは全ての医療において難しいということです。ただ、症状をなくす状態を維持することは可能ですし、症状を経験したことでご自身の体の特徴を知り、他の不調を予防することにもなります。
ケース④:脳の混乱
痛みというのは脳の感覚です。筋肉は痛みを感じる物質を出しているだけで、人が痛みを認知するには脳が強く関与しています。
ということは脳が混乱するとその痛みの感じ方は変わる可能性があるわけです。
作家の夏樹静子さんの著書「腰痛放浪記 椅子がこわい」にも書いていますが、腰痛を心因性として結論づけていました。
腰痛があった当初はおそらく筋肉の緊張による痛みだったのでしょうが、それが慢性化することで徐々に脳の影響度が筋肉から発する痛みよりも強くなってしまって、筋肉に痛みがない状況でも脳によって再現されている場合です。
全ての腰痛が長期化すると、脳が混乱するわけではありません。痛みだけでなく他の不調が継続的に発生している場合に脳は情報過多になってしまいます。複数の不調を統合するように感じてしまって、もっとも緊急度の高い痛みに情報が増えてしまうことがあります。
腰痛の鍼治療で効果が見られない時の対策
これまで解説した状況にあった患者さんに対して当院が行った対策は主に3つになります。
対策①:セルフケアの指導
生活習慣に関わるところです。
普段の生活を細かくヒアリングして生活習慣の改善を提案しています。
腰痛なのに?と思うわれることがありますが、痛みの本体が内臓にあることを丁寧に説明して理解してもらっています。
そして、長期間の腰痛によって筋肉などの組織も変性しているので、今の身体を上手くつきあっていくために、普段の生活をバージョンアップしていく必要があることを伝えていきます。
多くの場合は「めんどうだな」という雰囲気でなかなか実施してくれませんが、効果を感じるようにあると楽しく続けるようになり、腰痛から卒業するようになります。
対策②:カウンセリング・傾聴
脳の混乱や日常のストレスを解消することを目的に行います。
何気なく普段感じていることを言葉にするだけでも、ストレスは軽減しますし、脳は整理されます。鍼灸は医療の中でも患者さんとの距離が近いことが特徴としてあるので、お話を聞く時間が取ることができます。
「実は・・・」という内容を話して、心のなかにある重りが取れたときに、いつもよりも腰が軽くなったという場合もあります。
対策③:全身治療
腰が痛いからといって、筋肉を中心に治療していては慢性腰痛の場合はなかなか改善しません。これまでの説明にあるように、どこに原因があるかは人それぞれだからです。
同じ原因というのは一人としていないとも言えます。
これまでに説明した腰痛を起こす要因をしっかり理解したうえで、全身の不調を一つ一つ丁寧に解決していくことが遠回りに見えて、本質的な解決の道となります。
腰痛で鍼治療を受けるべきか悩んだら?
鍼灸を選ぼうと考えているあなたは、腰痛の原因はすでに複雑化している可能性が高いです。
上手に鍼灸院を活用するには腰痛に対する認識を変えてもらって、生活習慣などできるだけ多くの情報を鍼灸師に伝えるようにしてください
そうすれば、本当の原因に近づきやすくなります。
SNS等で「ぼきっ」っと1発で治るケースが散見されますが、数多くの事例の中のいろんな条件がそろった事例のみを出しています。慢性腰痛が同じように改善するとは限りません。
なので、あなたも同じ様になるとは考えずに鍼灸師とともに治るプロセスを一緒に進んで行くようにしてください。そういった考え方で鍼灸院に訪れるとお互いに良い関係で効率よい施術を受けることができます。
鍼灸院だからといって整体を主にしているところもありますので、腰痛を筋肉や姿勢が原因と考えている鍼灸院ではなく、生活習慣や考え方など全身を診て原因を見つけてくれる鍼灸院を探してください。
まとめ
今回は慢性腰痛の原因について解説しました。
腰痛と言うと、姿勢や筋肉の歪みと捉えている方が多いですが、それは症状の1面しか見ていないことになります。
それで改善されたのなら、比較的改善しやすい腰痛だったのかもしれませんし、徐々に回復している途中だったのだろうと思います。
一方で、マッサージや整体で改善しない腰痛だったのなら、もう少し深く、幅広く、体だけでなく生活習慣や普段の悩みなどにもアプローチしていく必要があります。
慢性腰痛は簡単ではありません。実に奥の深い症状です。
今回の記事が改善に向けた一歩になることを願っています。
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。