投稿日:2025年3月14日 / 更新日:2026年5月28日
針治療のミスによる事故・トラブル事例とリスク回避の対処法
カテゴリ: Q&A(よくある質問)

鍼灸治療は長くから伝統医療として成熟してきました。ただ、施術者の技量や管理の不備により、思わぬ事故やトラブルが発生するケースも報告されています。
例えば、鍼の誤った刺入で気胸や内臓損傷、出血、感染症といった重大な合併症が生じる危険性があります。
本記事では、実際に起こった事例を解説した文献をもとに、鍼治療で起こりうる事故やリスク、そして安全に施術を受けるためのポイントについて解説します。
また、当院で行っているリスク回避のための対策や、施術前のカウンセリングの重要性についても紹介します。

この記事の執筆者
ミントはり灸院 院長
森本 賢司
高度専門鍼灸師
【略歴】
神戸東洋医療学院卒業
神戸東洋医療学院にて河村廣定先生に師事
明治国際医療大学 大学院 修士課程 修了
神戸東洋医療学院 非常勤講師
【資格】
はり師免許証・きゅう師免許証
鍼治療でミスはある?事故の可能性と安全性
鍼治療は国家資格を持つ鍼灸師が行うことで、リスクの低い、比較的安全性の高い施術として知られています。
実際、国家資格を持つ鍼灸師は解剖学や衛生学、安全管理について学んだうえで施術を行っています。
ただし、どの医療行為にも一定のリスクがあるように、鍼灸にも完全にゼロとは言い切れないリスクがあります。
特に施術者の経験不足や、安全管理への意識不足、誤った施術方法などによって、気胸や感染症などの有害事象が起こるケースがあります。
しかし、多くの事故は適切な知識と管理によって予防できるものです。
そのため、「どのようなリスクがあるのか」を知ったうえで、信頼できる施術者を選ぶことが重要です。
鍼治療のミスによる事故例
国内最も鍼灸の論文が集まっている医中誌Webに収録された有害事象論文(2009年から2013年)を調べると以下のようになりました。
・鍼に関連する有害事象:28文献(34症例)
・灸に関連する有害事象:2文献(2症例)
この数が多いのか少ないのかの判断は難しいですが、消費者センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)を使って調べると、
マッサージや整骨院、整体院などの施術等における消費者相談件数は約2400件程度と推計されています。
そのうち、鍼灸院に関する相談件数は約800件程度とされています。
これは1施設あたり年間0.5件程度と言われています。
また近年は、美容鍼灸に関する相談が年20%のペースで増加しています。
鍼灸治療で起こりうるトラブル
鍼灸に関する有害事象(トラブル)の文献で紹介されていた代表的な事例を紹介します。
鍼治療による気胸
鍼治療による気胸は、鍼が肺に達し胸腔内に空気が漏れることで発生する医原性気胸です。
背部や胸部の鍼治療で、鍼が深く刺さりすぎて肺を傷つけることが主な原因です。
特に肩甲骨付近や肋間筋付近の刺鍼でリスクが高まります。
文献の事例では、肩痛の治療で鍼を受けたバレーボール選手が片側性気胸を発症し、施術中または直後に症状が出現した例があります。
折鍼(せっしん)事故
折鍼とは、鍼治療中に鍼が体内で折れてしまう医療事故のことです。
鍼は非常に丈夫なので通常は折れることはありませんが、以下のような条件で発生する可能性があります。
・鍼を刺した状態で患者が体を動かした
・筋肉が急激に収縮した
・深く刺した状態で運動鍼を行った
・電気刺激で腐食した鍼を使用した
・筋力の強い患者に細い鍼を使用した
過去には福岡ソフトバンクホークスの選手が腰部への鍼治療中に折鍼事故を経験し、体内に残った鍼を切開手術で摘出した事例もありました。
これは鍼をしたまま体を動かしたことが原因とされています。
腎臓や内臓など体の内部に鍼が残る事故
鍼治療による内臓への出血事故は稀ですが、重大な合併症として報告されています。
74歳女性の症例では、約10年前の腰痛治療のための埋没鍼が原因で、腎臓結石と尿管結石が形成されました。
埋没鍼は禁止されている方法であり、この報告は鍼灸業界でも大きな問題となりました。
鍼灸でのやけどや内出血
鍼治療後に内出血が起こることがあります。
これは毛細血管の損傷によって、皮下組織に血液が滲み出すことで発生します。
血管が硬く弾性力が低下している場合や、循環不良、皮膚や筋肉の緊張などによって起こりやすくなります。
通常は数週間程度で自然に消失し、跡が残ることはほとんどありません。
ただし、熟練した鍼灸師でも完全に避けることは難しいとされています。
また、お灸や熱を発する器具を使用する場合は火傷のリスクがあります。
近年のお灸は低温化が進み、昔より火傷が起こりにくくなっていますが、皮膚の状態や体質によってリスクは変化します。
熱いほど効くわけではなく、「温かくて気持ちいい」と感じる程度が適切です。
感染症
皮膚に存在する常在菌が鍼を介して体内に侵入し、感染症を引き起こすことがあります。
軽度であればニキビのような炎症で済みますが、深部に感染が広がると重大なトラブルになる場合があります。
特に糖尿病やステロイド長期服用など、感染リスクが高い方は注意が必要です。
実際に、糖尿病患者が左足底への鍼灸治療後に感染症を起こし、左下腿まで壊死した症例も報告されています。
鍼治療のミスはどのくらい起こる?リスクの実際
ここまで読むと、「鍼治療は危険なのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
しかし実際には、鍼灸は比較的安全性の高い施術とされています。
医中誌Webに掲載された有害事象報告数や、PIO-NETの相談件数を見ても、施術数全体から考えると事故の発生頻度は非常に低いと考えられています。
発生し報告される事故の多くは「内出血」「違和感」「火傷」など比較的、軽微なものが多くを占めています。
また、重大事故として報告されるケースの多くは、
・必要以上に深く刺している
・安全管理が不十分
・置鍼中の管理不足
・禁止されている施術方法
など、適切な管理がされていないケースが中心です。
つまり、施術者が基本的な安全管理を徹底することで、多くのリスクは大幅に減らせます。
鍼治療でミスが起きる原因とは?
鍼治療でトラブルが起きる原因として多いのは、以下のようなものです。
・解剖学的知識の不足
・安全深度を超えた深い刺鍼
・置鍼中の管理不足
・患者とのコミュニケーション不足
・衛生管理の不徹底
・患者の持病や服薬状況の確認不足
特に多くの事故は、「深く刺しすぎること」と「置鍼したまま管理が不十分になること」が関係しています。
そのため、安全性を重視している治療院では、必要以上に深く刺さないことや、置鍼中の管理を徹底しています。
ちなみに当院でも、この2点について特に重視しており、深く刺すことはありませんし、置鍼は行っておりません。
鍼灸治療のトラブルを防ぐには
これまで紹介してきたトラブルは、適切な対応によってリスクを下げることができます。
患者さん自身も、施術前後のコミュニケーションを意識することで、安全性を高めることが可能です。
信頼できる治療院を選ぶ
信頼できる治療院は沢山ありますが、今回のような事故を防ぐという意味では、施術方法や安全対策についてしっかり説明している院を選ぶことが大切です。
ホームページなどで、
・衛生管理について説明がある
・安全対策について記載がある
・リスク説明をきちんとしている
などを確認するとよいでしょう。
不安な点は事前に問い合わせても問題ありません。
問診できちんと情報を伝える
施術前には、持病や服薬状況、不安なことをきちんと伝えましょう。
特に糖尿病など感染リスクが高い病気がある場合は重要です。
どうしても口頭で伝えづらい場合は、メモに書いて渡す方法もおすすめです。
私自身も、患者さんからメモをいただくことがありますが、とても助かっています。
治療中の違和感を我慢しない
施術中は担当の鍼灸師と自由に会話してかまいません。
熱い、痛い、違和感があるなど、感じたことはすぐに伝えてください。
その言葉をもとに刺激量を調整する場合があります。
ただし、鍼が刺さった状態で急に体を動かすのは危険です。
例えば「この辺が痛いです」と説明しながら、大きく体をひねってしまう方もいますが、これは折鍼のリスクがあります。
施術中は「体はストップ、口は動かす」を意識してください。
鍼治療でミスを避けるためのチェックポイント
安全に鍼治療を受けるためには、以下のポイントを確認しておくと安心です。
・国家資格を持つ鍼灸師か
・衛生管理について説明があるか
・リスク説明をきちんとしているか
・施術前に丁寧な問診があるか
・持病や服薬確認をしているか
・初回から強い刺激を勧めてこないか
・不安や質問にしっかり答えてくれるか
「強くやるほど効く」という考え方は危険です。
安全性を重視しながら、患者さんの状態に合わせて施術を調整してくれる治療院を選びましょう。
まとめ
今回は、鍼灸で起こりうる医療過誤やトラブルについて解説しました。
事故の事例を見ると怖く感じるかもしれませんが、鍼灸は本来とても安全性の高い施術です。
そして、多くのトラブルは適切な知識と安全管理によって予防できます。
施術を受ける側も、
・信頼できる治療院を選ぶ
・持病や不安をきちんと伝える
・違和感を我慢しない
ことが大切です。
安心して鍼治療を受けるためにも、事前の確認とコミュニケーションを大切にしましょう。
今回の記事を書くにあたって以下の文章を参考にしました。
参考:鍼灸関連有害事象に関する調査(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/148011/201450001A_upload/201450001A0008.pdf)
参考:鍼灸事故4症例(https://shinkyu-net.jp/archives/2418)
参考:全日本鍼灸学会(https://jsam.jp/important/important-notice20220427/)
参考:鍼治療後に生じた両側性気胸の1症例(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaamkanto/41/2/41_271/_pdf/-char/ja)
当院「ミントはり灸院」は、根本から改善することに特化した神戸の鍼灸院です《年間10,000人超の実績》。六甲道駅3分”六甲院”/三ノ宮駅6分”三ノ宮院”/明石駅5分”明石院”の3店舗がございます。全室個室でマンツーマンで施術しています、ぜひお越しください。






























